「偉大なる敗北者たち」ヴォルフ・シュナイダー
歴史に名を残した敗北者17人の評伝。
このうち、悲劇のヒーロー、エルヴィン・ロンメルは第2次世界大戦中、アフリカ戦線で活躍したドイツの将軍。ミリタリーマニアにはおなじみだ。
奇襲攻撃を得意とし、戦力で劣りながらも英国軍を翻弄した。常に陣頭で指揮を執り兵士に慕われた。「司令官たるもの前線で指揮をとれ」が口癖だったとか。フェアプレーを重んじ、休戦中、敵に飲み水を送ったエピソードも興味深かった。
ヒトラー暗殺未遂事件にかかわったとされ、自殺に追い込まれた。この本では暗殺に反対していたことになっており、余計に気の毒。
あらためて興味がわいたので、ウィキペディアで調べたら、功名心が強く独断専行タイプだったとか、若いころからヒトラーの信奉者で警護隊長を任されるくらい信頼されていたとか、意外な顔が分かり、そっちのほうが面白かった。
戦いぶりは相手を撹乱して降伏に追い込む「ソフトキル」を好んだようだ。
同じような悲劇のヒーロー、伍子胥が徹底的に敵を攻め滅ぼそうとする、いわば「ハードキル」だったのと比べ、対照的だ。
伍子胥は古代中国の呉の将軍。孫武(「孫子」として知られる軍事思想家)とともに呉の覇権を支えたが、敵の策略で王にうとまれ、自殺に追い込まれた。生きざまが激しく、「史記」に出てくる中で一番好きな人物。
(2015年1月18日Facebook投稿を転載)