てっちレビュー

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「ゲゲゲの家計簿」水木しげる 売れっ子になるまでの困窮をリアルに描く

「ゲゲゲの家計簿」

「ゲゲゲの家計簿」水木しげる

水木しげるが神戸でアパートを経営しながら紙芝居を描いていた下積み時代の1951年から、漫画「テレビくん」が第6回講談社児童まんが賞を受賞して売れっ子になり、水木プロダクションを設立した65年までの歩みを描く。上下2巻の漫画。

 

この時期に自ら付けていた家計簿が発見されたことがこの作品を描くきっかけになったという。作中に家計簿が登場し、売れっ子になるまでの困窮ぶりがリアルにわかる。

 

あまりにも所得申告が少ないとして脱税を疑った税務署の職員が訪ねてきたエピソードもある。「この所得は人間が生活できる金額ではない。でも、あなた生活しているでしょう?」と言われて激怒し、「実際に少ないんだ。お前らに庶民の生活がわかるか」と、質札の束を見せて追い払う。

 

同居していた兄弟や古里の両親との触れ合いも描かれる。

 

家計簿では、父のことを「イトツ」(胃が突出して丈夫という意味だとか)、母のことを「イカル」(よく怒るからだとか)と書いていた。父が退職金から資金援助してくれた時に、家計簿で「イトツ」ではなく「亮一」と父の名前を書いている辺りは、父をありがたがる心情がうかがえて面白い。

 

同居家族のために冷蔵庫や洗濯機を買うエピソードでは、当時の冷蔵庫が上段に氷、下段に食品を入れるタイプの「氷冷蔵庫」だったことなどがわかり、興味深かった。