
世界の傑作機「X-プレーンズ」
新しい技術を試みたり、記録達成に特化したりする実験機は、特異な造形だったりして実用機とは違う魅力がある。
本書「X-プレーンズ」は、軍用機マニア向けの「世界の傑作機」シリーズの1冊。
戦後の米国の実験機を紹介しており、眺めていて、面白い。
代表例が、グラマンX-29。
主翼が端になるにつれ前に伸びる「前進翼」の実験機で、白をベースに青と赤のラインで飾るマーキングが、独特の姿を際立たせている。

1984年に初飛行。軽戦闘機F-5Aを改造した実験機なので、小ぶりで、機敏そうな感じもいい。
航空アクション漫画の傑作「エリア88」(新谷かおる)の主人公・風間真の乗機のひとつとして、愛好家に人気が高い。

ハセガワが1/72スケールで商品化したプラモデルは、ロングセラー。
垂直尾翼を青く塗ってユニコーンを描いた風間真の乗機仕様も商品化された。
どちらもそろえたいところだ。
風間真仕様は、適当にパイロン(武装固定具)をでっち上げて、サイドワインダー(ミサイルの一種)を装備させると、いい。
前進翼機と言えば、ロシアでも実験機Su-47(S-37)が1997年に初飛行した。
スホーイ設計局がロシア空軍に採用してもらおうと開発したけど、採用されなかった。
X-29と比べれば、大型で、のっぺりとしたデザインだが、悪くない。
X-29と違い、黒ずくめというのが悪者感たっぷりだ。
米国でも、ロシアでも、実験機にとどまったということは、前進翼機は、実用性が低いということだろうか。
「エリア88」という漫画の世界で実戦参加の勇姿を見せてくれたのが、うれしい。
米国がドイツと共同開発した、ロックウェル-メッサーシュミット・ベルコウ・ブロームX-31も、面白い。
「ヘルプスト機動」の実験機で、推力偏向ノズル付きのエンジンを搭載。
ヘルプスト機動とは、70度といった大きな迎角の姿勢(70度、上を向いた姿勢)を取り、失速寸前の状態から、偏向ノズルでエンジンの推力の向きを変え、クルッと宙返りのように方向転換する機動。
1990年に初飛行。ヘルプスト機動を成功させた。


Sharkitという模型メーカーが1/72スケールでキット化したが、入手困難のようだ。以前、ヤフオクに出品されているのを見て、すぐに入札したが、とんでもない高値に競り上がったので、諦めた。いくらだったかは忘れた。
実用機でも、ロシアの戦闘機Su-37(推力偏向ノズル付き)がヘルプスト機動と同様な機動「クルビット」を1996年に成功させた。
気になるのは、実際の空戦で、ヘルプスト機動やクルビットが役に立つのかということ。これについては、賛否両論があるようだ。
造形のインパクトで言うと、ダグラスX-3は外せない。
極端に細長く、先端が細く尖った姿が目を引く。SF映画に出てきそうだ。

マッハ2を狙った実験機で、1952年に初飛行した。
いかにも速く飛べそうな姿に反して、マッハ1にも到達できなかった。
細長くしすぎて、小径の非力なエンジンしか搭載できなかったのが、失敗だった。
同様に細長い戦闘機ロッキードF-104の開発に貢献したらしく、そこが救いか。
斬新なスタイルと悲劇性が相まって、人気が高い。
X-3に先立ち、音速を狙った実験機、ベルX-1は、あまり格好良くはないけど、1947年に音速を記録し、目的を達した(最高速度マッハ1.45)。
銃弾の形を素直に真似たスタイルが微笑ましい。
当時、音速で飛ぶ物体は銃弾くらいだったからだという。
X-3とは違って、ロケットエンジンを採用し、母機に積んで空に運び、切り離して飛ばせる方式だった。
そうすると、飛行機というより、ミサイルみたいなものではないかと感じてしまう。
高速の極致を目指した実験機が、ノースアメリカンX-15。
1967年にマッハ6.7を記録した。
X-1と同様に、ロケットエンジンを搭載し、母機に積んで空に運び、切り離して飛ばせた。
これくらいの高速で飛ぶと、摩擦熱で機体表面がものすごく熱くなるため、耐熱ニッケル合金で表面を覆った。
さらに、高熱で気化して、機体表面の熱を奪ってくれる特殊な塗料を表面に塗ることもあったという。
1963年に到達高度10万7960メートルという記録も、打ち立てた。
高度10万メートルと言えば、国際宇宙連盟の定義では「宇宙」。
X-15を操縦したパイロットは宇宙飛行士に認定されたという。
そして、X-15の実験は、スペースシャトルの開発に役立ったらしい。
ちなみに、実用ジェット機の最高速度記録は、米国の戦略偵察機SR-71が1976年に達成したマッハ3.3。
実用ジェット機の最高高度記録は、旧ソ連の迎撃戦闘機MiG-25が1977年に到達した3万7650メートル。
いかに、X-15が破格かがわかる。









