
「マイガーランド」マツオヒロミ
レトロモダンな女性を描くイラストレーター、マツオヒロミの画集「マイガーランド」はランジェリーがテーマ。
「あなたがあなたに贈る祝福のランジェリー」というキーワードに、女性にとってランジェリーとは何なのか、作者の意図が表れている。
あとがきによると、ランジェリーデザイナーの鴨居羊子の著書「わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい」を読んだことが、このテーマを選ぶ発端。
鴨居の著書の中で、一目惚れして買ったピンクのガーターベルトを身につけた自身を鏡で見るくだりの「祝福されたおなか」という表現に感動したという。
たしかに、女性のランジェリーは、自らが楽しむものなのだろうと想像する。
何で読んだか、忘れたが、「女は、まず自分が見る」という趣旨の言葉を思い出す。
メイクに関する記述だっただろうか。
妻や長女と一緒に買い物に行くと、化粧品売り場に立ち寄ることがある。
女性の化粧品は、なぜ、こんなにいっぱい種類があるのかと、いつも思う。
さすがに、下着売り場にはついて行かないが、遠目に見て、同じようなことを感じる。
あと、やたら、装飾的だということ。
男性の立場としては、恋人の下着姿には、おおっ、と気持ちが高まるけど、別にその姿をじっくりと鑑賞するわけでもない。
おしゃれなランジェリーでも、平凡な下着でも、気持ちの高まり具合は、そう変わらないと思う。
おしゃれなランジェリーだったら、へぇー、とは思うが、2~3秒のこと。
少なくとも私は、そうだ。
やはり、女性のランジェリーは、恋人に見せる目的も兼ねるかもしれないが、基本的には、自分の気持ちを盛り上げるものなのだろう。
男性の場合、下着のおしゃれといったら、せいぜい、Tシャツくらいか。
ちなみに私は、派手な色のTシャツが好き。赤とか黄色とかピンクとか。
あと、派手な色ではないけど、タミヤのTシャツ。星ふたつのロゴ付きの。
夏場はシャツの下に透けて見えるので、仕事で接した相手に「タミヤが好きですか」と言われることもある。
でも、まあ、その程度。
秘かな、おしゃれの幅が広い点では、女性がうらやましい。
画集「マイガーランド」は、架空のランジェリーショップのスタイルブックの体裁を取るパート、ランジェリーの歴史を解説するパート、短い漫画で構成してある。
冒頭の漫画で、女性がクローゼットを整理していて、かつてショップで一目惚れして買ったものの、一度も着けていないランジェリーが出てくる。
そして、ショップのスタイルブックも出てきて「あなたがあなたに贈る祝福のランジェリー」という言葉が目に留まる。
なかなか、いい感じの導入だ。

その後に続く、スタイルブックパートで、漫画の女性のランジェリーが出てくる

この画集で、私が一番好きな作品は、白と黒のチェック柄のランジェリーを着けた女性のイラスト。
赤いランジェリー姿の上に黒いジャケットをはおった女性のイラストも、いい。
この作者のイラストは、憂いのある女性の目が、とても魅力的だ。


ランジェリーの歴史のパートは、1900年代から1990年代まで10年刻みに変遷をたどる。
装った姿と、その下に隠れたランジェリー姿を並べているのが、面白い。


終盤の漫画では、ショップの店員がランジェリーの手入れを説く。
風呂に入った時に手洗いするという。
ここで、店員のセリフがいい。
「下着って、肌に一番近いじゃないですか。だから、お風呂で一緒に洗って、タオルでふいて…って、やってると、何だか、もう一人の自分を優しくふいてあげてる気がしてくるんですよ。自分のこと、『がんばったね』『お疲れさま』って、いたわりながら」
女性の方は、実践してみたら、面白いんじゃないだろうか。
<余談>
思うに、「裸婦」は、美術の主要な題材のひとつだけど、「ランジェリー姿」は、あまり描かれていないのではないか。なぜだろう。
(コルセット姿はある。マネの「ナナ」等)。
その意味でも、画集「マイガーランド」は、興味深い。
ちなみに、ランジェリー姿の女性を描いた作品で、私が真っ先に思い浮かぶものと言えば、漫画「メフィスト」(三山のぼる)のひとこま。
主人公で美貌の魔女アルマが、演劇のポスターに、ナチスドイツ風のランジェリー姿で登場する。

このこまの元ネタは、映画「地獄に墜ちた勇者ども」(1969年、イタリア・西ドイツ・スイス合作)のワンシーン。ただし、こちらは女装した男性だ。




