
「北斗の拳イチゴ味」行徒妹
格闘漫画の傑作「北斗の拳」(原作・武論尊、作画・原哲夫)のパロディ作品で、ギャグ漫画。
原典の主人公ケンシロウと戦う強敵(とも)の1人、聖帝サウザーがここでは主役。
私は、サウザーが大好きなので、これは、うれしい。
「北斗の拳イチゴ味」(原案・武論尊、原哲夫、シナリオ・河田雄志、作画・行徒妹)は、長女に勧められて知った。
原哲夫の画風そっくりに描いた懐かしのキャラクターが、馬鹿馬鹿しすぎるギャグを繰り広げる。
好みが分かれる作品かもしれない。
私は、面白いと思うし、読んで笑える。
このような作品を勧めてくる長女の若い娘らしからぬ変なセンスが、親として、気がかりではあるが・・・
(長女は中学生の頃、私が勧めた「魁!男塾」にはまり、同じ作者・宮下あきらの作品を収集し、私より遥かに詳しくなった)。
原典「北斗の拳」によると、ケンシロウが一子相伝の北斗神拳の伝承者であるのに対し、サウザーも、南斗聖拳の一派としては珍しく一子相伝の南斗鳳凰拳の伝承者。
孤児だったサウザーは、南斗鳳凰拳の伝承者オウガイに育てられ、拳法の修行を積み、南斗鳳凰拳を受け継ぐ。
修行の締めくくりのいわば卒業試験で、若かりしサウザーは、目隠しをして、謎の相手と戦う。
相手を倒し、目隠しを取ってみると、重傷を負い、瀕死の相手は師匠オウガイ。
オウガイは説く。
「南斗鳳凰拳もまた北斗神拳と同じく一子相伝の拳法。伝承者が新たなる伝承者に倒されていくのも、われらが宿命」と。
敬愛する師匠をわが手にかけてしまったサウザーは号泣。
「こんなに哀しいのなら、苦しいのなら、愛などいらぬ」と、すっかり、ひねくれて、冷酷な人間になってしまったという設定だ。

サウザーは、ケンシロウとの対決に敗れ、ケンシロウに「愛は哀しみや苦しみだけではない。おまえは温もりを覚えているはずだ」と諭される。
これで、優しい心を取り戻し、最後は、師匠の遺体(永久保存処理済み)にすがりついて、息を引き取る。
なかなか、いいキャラクター。そう思って、私は、大好きだ。
本作「北斗の拳イチゴ味」は、数々の名場面をパロってギャグりまくる。
たとえば、ケンシロウに「愛は哀しみや苦しみだけではない。おまえは温もりを覚えているはずだ」と諭される名場面。
本作では、サウザーが、イヤホンを片っぽずつ使うなどケンシロウとの触れ合いを思い浮かべ、バットが「何だ、そのありえない思い出は。アイツ、一体、ケンに対して、どんな感情抱いてたんだ?」と突っ込むという具合。

特に「ターバンのガキ」にナイフで足を刺される場面へのこだわりが面白い。
<ターバンのガキとは?>
念のため、原典のストーリーを補足説明する。
サウザーは、ケンシロウとの決戦の前に、多くの人に慕われていた人格者シュウ(南斗白鷺拳の使い手)を殺害。
シュウを慕う少年(頭にターバンを巻いている)が、仇を取ろうと、サウザーの足をナイフで刺す。
そこで、サウザーは「見ろ、このガキを。シュウへの思いがこんなガキすら狂わす」と言って、師匠との思い出や愛情を捨てた経緯を語り始めるのだ。
(以上、補足説明)


さて、「北斗の拳イチゴ味」では、足を刺されたサウザーが絆創膏を貼り、ツッコミ役のバットが「ナイフで刺されてバンソーコーだって? あんな強がりに勝てる訳がねぇよ!」と驚愕。

その後の再戦では、刺されそうになったサウザーが華麗にジャンプしてかわす。しかし、着地したところで刺される。サウザーは「このおれの動きをさらに読み、気配を悟られることなく、稲妻のごとく間合いに入り込むだと。貴様は一体?」と驚愕。


その後の再戦では、ターバンのガキをあらかじめ拘束しておいたにもかかわらず、いつの間にか、拘束から抜けたガキに足を刺される。


しまいには、ターバンのガキはケンシロウを攻撃する。
サウザーは、ターバンのガキの恐ろしさを説き、「もはや、北斗と南斗がいがみ合っている時ではない」と指摘。ケンシロウが「ともに戦えというのか、サウザー?」と応じ、バットが「ヤバイぞ、リン。ケンが遠くに行っちまう」と慌てる、といった調子。


この場面一本だけでも、これだけ、しつこく展開してくるのを、面白いと感じられるかどうかが、本作を好きになれるかどうかの分かれ目だろう。
もう1人、原典「北斗の拳」の登場人物で私が大好きなのは、ケンシロウの強敵(とも)の1人で、南斗聖拳(南斗孤鷲拳だとか)の使い手、シン。
まだ、そんなに強くなかった頃のケンシロウを倒し、ケンシロウの恋人ユリアを奪った人物だ。
本作「北斗の拳イチゴ味」では、シンは、実はケンシロウが好きだという同性愛設定。
ユリアにケンシロウを奪われて嫉妬し、自分のものにならないのなら、とケンシロウを倒してしまう。
照れ隠しで、「おれは、ユリアが好きだ」と言ってしまい、行きがかり上、ユリアを連れ去るということになっている。
この設定もなかなか面白い。


