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世界の傑作機「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」 シーダートは海面で離着水するジェット飛行艇 軍用機ジェット化に空母の改良が追いつかない時代に誕生

「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」

世界の傑作機「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」

新しい技術は、アイデアの試行から生まれる。

米国で戦後の1950年代に開発、試験されたF2Yシーダートは、超音速を狙ってデルタ翼(三角形の主翼)を備えたジェット飛行艇だ。

 

当時、軍用機のジェット化が急速に進む中、海軍では航空母艦の飛行甲板延長といった改良が追いつかず、離着艦速度の速いジェット艦上機の運用に限界があった。

そこで、目を付けたのが、海面を滑走路とする飛行艇のジェット化。

広い大海原であれば、離着水速度や離着水距離に制限はない。超音速のジェット機も、いけるのではないかと。

普段は航空母艦に積んでおいて、飛び立つ時はクレーンで海面に下ろす。帰ってきて海面に着水した後、クレーンで回収するというアイデアだった。

 

「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」より。シーダートその1

「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」より。シーダートその2

結果としては、離着水時に機体の振動が激しすぎる問題を解決できず、実用化には至らなかった。

(パイロットが計器を読み取れないくらい振動が激しかったらしい)。

 

じゃあ、シーダートの開発、試験は無駄だったのかというと、そうではないと思う。

この挑戦があったおかげで、「航空母艦の改良で、対処しないとダメだ」という方向に目が向いたのだと思う。

 

実際にその後、航空母艦の改良が進展。

離艦時はカタパルトで加速させ、着艦時はワイヤーとフックで減速させるアイデアが実用化され、ジェット艦上機の高速化に対応できるようになった。

たとえば、映画「トップガン」(1986年)に登場するF-14トムキャットのようなジェット艦上機は、このように運用されている。

 


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本書「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」は、文林堂の「世界の傑作機」シリーズのひとつ。

シーダートに関する書籍は、それまで洋書しかなかったので、私のような軍用機ファンには待望の1冊だ。

 

 

シーダートだけでは、書くことが少なすぎたのだろう。

私にとっては、あまり興味がない大型ジェット飛行艇P6Mシーマスター(やはり、実用化には至らなかった)と抱き合わせになっているのは、やむを得ないだろう。

 

なぜ、シーマスターには興味がなくて、シーダートには興味があるのかって?

だって、シーダートはかっこいいから。

デルタ翼機というのがいい。いかにも、速そうだ。

海面で離着水する飛行艇だから、ジェットエンジンを機体上面に配置した姿も変わっていて、目を引く。

 

シーダートを開発した米国のコンベア社は、デルタ翼機が得意で、米空軍に採用されたF-102デルタダガー、F-106デルタダートも、デルタ翼機だ。

 

 

私がデルタ翼機に惹かれるのは、航空アクション漫画の傑作「エリア88」(新谷かおる)の影響が大きい。

主人公・風間真の乗機として、デルタ翼機のクフィル(イスラエル製の戦闘機)やドラケン(スウェーデン製の戦闘機)が登場するから。

デルタ翼機で、私が一番かっこいいと思うのは、ビゲン(スウェーデン製の戦闘機)。

ビゲンのプラモデルは、昔はハセガワの古い製品しか手に入らなかったけど、今では、チェコの模型メーカー、スペシャルホビーがもっと精巧なものを製品化していて、Amazon等で買える。うれしいことだ。

 

 

シーダートは、残念ながら、フランスの模型メーカー、マッハ2の古くて雑な製品しかない。

希少価値が高いので、たまに、ヤフオクやAmazonで見かけても、高値で出品されている。私は、ヤフオクで適正価格の時にいくつか買い、その中で、状態の良い品を選んで、手元に残している。

 

今の目で見たら、デルタ翼機みたいに、見るからに飛行艇に不向きな形状のものを実用化しようとしていたこと自体が、すごいと思う。

本書「F2Yシーダート/P6Mシーマスター」によると、シーダートは1951年に開発がスタート。

コンベア社にとって、実験機XF-92に続くデルタ翼の開発だったという。

地上の滑走路から飛び立つ、つまり、実用化がより簡単だと思われるデルタダガーよりも先に、シーダートに取り組んだというのが、面白い。

1951年当時、航空母艦で運用されていたジェット艦上機は、直線翼で音速は出ないF9F-2しかなく、海軍に超音速機を売り込みたい狙いがあったという。

シーダートがザバザバと波を立てながら、海面を疾走する姿は見ものだろう。

 

 

ちなみに、本書によると、水面で離着水する航空機でも、浮力を得るフロートを備えていて機体の主要部分が水面に接さないものを「水上機」、機体の主要部分を水面に接して浮力を得るものを「飛行艇」と分類する。

航空母艦の飛行甲板から離着艦するものを「艦上機」、艦艇に搭載されるが、飛行甲板から離着艦しないものを「艦載機」と分類するので、シーダートは艦載飛行艇、シーマスターは純粋な飛行艇だという。

 

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