
「Newton」2026年2月号・特集「発見間近!?地球外生命」
地球外生命を探す時、「水(H2O)が液体として存在する環境があるかどうか」が大きなポイントになっている。
太陽系で、地球には多種多様な生命があり、隣の金星や火星には、少なくとも今のところ、生命が確認されていないのは、太陽と地球の距離、地球の大きさがほどよくて、液体の水が存在できたからだ───というのは、よく知られた話。
このため、水が液体として存在する環境があるかどうかを調べるのが、地球外生命探査のひとつのアプローチなのだけども・・・
この広い宇宙には、地球の生命とは全く違う環境で暮らす生命、つまり、液体の水がない環境の生命だって、あるかもしれない。
その場合、どうやって生命活動の痕跡を探るのだろうか───
科学雑誌「Newton」の2026年2月号の特集記事「発見間近!?地球外生命」(監修=東京科学大地球生命研究所の関根康人教授)は、そんな疑問へのひとつの答えがあり、とても面白い。
特集記事によると、たとえば、土星の衛星タイタンは、表面の平均気温がマイナス180度。水の氷でできた地形の上に、水ではなく、液体のメタンによる海や川が形成されている。
液体メタンの中で生きられるような、地球とは異なるタイプの生命がいる可能性があるものの、その場合、体が何でできていて、何を食べて、何を排出するかを事前に想定するのは困難だという。
そうであれば、何を手がかりに生命の痕跡を見つけるのか。
特集記事監修の研究者によると、「地球と異なるタイプの生命でも、それが生命かどうかを判断することは可能。生命が普遍的に持っているであろう性質を利用する」という。
説明が込み入っているので、私なりに要約すると、、、
それは、「生命が利用しそうな物質があるかどうか」を調べるということだ。
「生命が利用しそうな物質」は、どう見極めるか。
「ある物質に多くのバリエーションがあり、その中でも特に便利な種類のものが意図的に選ばれて消費されている場合、生命の存在が考えられる」ということのようだ。
念のため、原文を要約して以下に紹介する。
具体的には、生命が含まれる可能性のある試料を取ってきて、含まれる物質の「選択性」と「機能性」を調べる。
生命が体を構成したり、代謝に利用したりしている物質は「選択性」や「機能性」が高い。
選択性が高いとは、多くの物質の中から少数の物質が選ばれて使われている性質のこと。
たとえば、地球のアミノ酸。地球の自然界には500種類を超えるアミノ酸があるけども、生命は20種類ほどしか使っていない。
また、アミノ酸は、結合する側鎖によって、疎水性にも親水性にも、酸性にも塩基性にもなりうる。さらに、さまざまなアミノ酸をつなぐと多様なアミノ酸ができる。
このように、アミノ酸はさまざまな機能を実現でき、機能性が高い素材。
少ない種類でさまざまな機能を発揮できる素材を使うほうが、機能ごとに別々の素材を使うよりも効率的。
生命は、機能性が高い少数の素材を選んで使うことで、生命維持のためのエネルギーを節約していると考えられる。
(以上、要約)
ちなみに、この研究者は「土星の衛星タイタンに生命体がいる!」という著書がある。
以前、ブログの記事で紹介した本。
液体の水がなくても生命がいる可能性があると考えたら、地球外生命探査の幅は大きく広がる。これは、とてもワクワクする。
特集記事「発見間近!?地球外生命」は、当面の探査計画も紹介している。
木星の衛星エウロパ(表面の厚い氷の下に液体の水があると考えられている)には、NASA(米航空宇宙局)の探査機エウロパ・クリッパーが2030年4月に接近し、通り過ぎながら観測する。
2031年7月には、ESA(欧州宇宙機関)の探査機JUICE(ジュース)が木星に到達し、エウロパと衛星ガニメデ(同様に厚い氷の下に液体の水があると考えられている)に接近して通り過ぎながら観測するという。
タイタンには、NASAの探査機ドラゴンフライが2028年7月に打ち上げられ、34年に到達する計画がある。
タイタンには太陽系の衛星で唯一、厚い大気があり、プロペラを使った飛行が可能。
ドラゴンフライは、ドローンのようにプロペラで飛ぶ探査機で、地表近くを飛んで調べるという。

もっと、すごい計画もある。
早ければ、2030年代後半に、火星の有人探査をする計画があるという。
科学者が直接その場に行って、サンプルを採取し、分析したり、実験したりするほうが生命の痕跡を見つける可能性が高い。
特集記事監修の研究者は「運が良ければ、人類の最初の火星滞在中に地球外生命が発見されるかもしれない」と期待を寄せている。
これは、とても楽しみ。
「Newton」2026年2月号には、ほかにも面白い記事がある。
「歴史から消されたファラオ」「世界の渓谷をめぐる旅」の2本を紹介したい。
「歴史から消されたファラオ」は、ツタンカーメンの父であるアクエンアテン(アクナトン)に迫る。
この記事によると、多神教の古代エジプトで、太陽を神格化した「アトン」を唯一の神とする宗教改革をした王。
宗教改革に国民の反発は強く、2代後の王ツタンカーメンは多神教に回帰した。
さらに2代後の王ホルエムヘブ(ホレムヘブ)は、軍人から成り上がった野心家の王で、ツタンカーメンの業績をすべて自分の業績に書き換えた。
その流れをくむ王セティ1世は、神殿に歴代の王の名前を列記する際、アクナトンやツタンカーメン、その後を継いだ王アイまで、4人の王の名前を書かず、歴史から消し去ったという。
(だから、ツタンカーメンの存在が知られず、墓が荒らされていなかった)。
以前、ブログの記事で紹介した漫画「アトンの娘」(里中満智子)は、ツタンカーメンの王妃アンケセナーメンが主人公。
ツタンカーメンはもちろん、アクナトンも出てくる。
面白いので、おすすめ。
「世界の渓谷をめぐる旅」は、眺めるだけで楽しい。
ヨセミテ渓谷(米国)など各地の渓谷12カ所の紹介と、渓谷の形成の解説がある。
ブライドリバー渓谷(南アフリカ共和国)は、岩が丸く削られてできた「ポットホール」という穴が面白い。
川の合流地点にできる激しい渦で、岩の溝に入り込んだ小石が動きまわり周囲の岩を削ってできるという。

スタッドラギル渓谷(アイスランド)は、六角形の柱が立ち並ぶような「柱状節理」の地形が目を引く。
玄武岩のマグマが地上付近に上がり、冷える時に収縮する。水平方向に収縮する時には、六角形が最も効率的な形のため、このような割れ目ができるという。

おまけ。
表紙を開いてすぐの広告記事「NGKサイエンスガイド」が面白い。
「エディブルフルーツリボン」を紹介している。
フルーツのピューレを薄くシート状に広げて、低温のオーブンでじっくり、ゆっくりと水分を抜いて作る。
濃縮されたフルーツの味わいと、チューイングキャンディーのような食感が楽しめるお菓子だという。

「Newton」2026年2月号で、特集記事の次に目を引いたのが、これ。
これは、食べてみたい。長女に教えたら、作るかもしれない。
(詳しいレシピが載ったウェブサイトのページのリンクも張っておく)。
