
「芸術新潮 2026年2月号 大特集・攻殻機動隊」
書店で見つけ、パラパラとめくると、誌面の半分の80ページ近い、大がかりな特集。
とりあえず確保しておいたほうがいいと感じ、レジに持って行った。
雑誌「芸術新潮」2026年2月号は、漫画家・士郎正宗の人気作を原作とする「攻殻機動隊」ワールドの特集。
押井守が手がけた劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995年)も人気作だから、名前は知っているけど、原作も劇場版も見たことがない。
大学時代に所属したサークル「SF研究会」の部室に、同じ士郎正宗の「アップルシード」があったのを思い出した。
「攻殻機動隊」もあったのかもしれない。
どちらも、読んではいないのだけど。
ありがたいことに「芸術新潮」の「攻殻機動隊」特集は「総復習」「超展示」「最新作」の3部構成だ。
私のように原作も劇場版も見たことがない者でも、「総復習」の攻略ガイドを読んだら、少しは作品の世界がわかる。
「攻殻機動隊」は、人間の脳を電子ネットワークにつなぐ「電脳化」や、身体を機械化する「義体化」が進んだ未来の社会を舞台にした物語。
政府の対テロ組織「公安9課」のメンバーが、正体不明のハッカー「人形使い」を追うストーリーだという。

攻略ガイドを読んで、面白そうだなと思った。
「たとえば、脳がハッキングされて何が真実かわからなくなるとか、体をどんどん機械化していくと人間でなくなるのではないかとか。あるいはネットの中にもある種の意識などが生まれるとしたら、それも生命ではないのか、そうだとしたら、我々の生命や意識自体もプログラムの産物なのかもしれないなど、エンターテインメント作品でありながら、存在論的な問いをはらんでいる」という。
映画「ブレードランナー」(1982年)や「トータル・リコール」(1990年)、「マイノリティ・リポート」(2002年)が思い浮かんだ。
主人公は、公安9課の現場指揮官で、女性サイボーグの草薙素子。とんでもなく強いのだとか。
強いヒロインというのは私好み。クールな美女なら、なお良い。
漫画「メフィスト」(三山のぼる)のアルマとか、「風の谷のナウシカ」(宮崎駿)のクシャナ、「BASUTARD!!─暗黒の破壊神─」(萩原一至)のアーシェス・ネイ、テレビアニメ「超時空要塞マクロス」のミリア・ファリーナみたいな。
特集は、文筆家・木澤佐登志による特別論考「〈身体〉を実装する─『攻殻機動隊』における身体とテクノロジー」が、読み応えがある。

サイボーグである主人公・草薙素子は自己同一性をめぐる不安を抱えているとして、作中のセリフを引用しながら、その不安を説いていく。
特別論考から、素子のセリフを抜粋してみる。
「代謝の制御、知覚の鋭敏化、運動能力や反射の飛躍的な向上、情報処理の高速化と拡大。電脳と義体によって、より高度な能力の獲得を追求したあげく、最高度のメンテナンスなしには生存できなくなったとしても、文句を言う筋合いじゃないわ」
「たしかに退職する権利は認められているわ。この義体と記憶の一部を謹んで政府にお返しすればね」
(以上、抜粋)
筆者の考察も以下に一部抜粋してみる。
素子の実存不安、その核心がこの箇所に集約されている。
すなわち、彼女は自分の身体を、それが自分の身体であるにもかかわらず「所有」することができない。
素子の身体=義体は企業の製造ラインで作られ、その後も権利上は政府の所有物となっている。
身体のメンテナンスも自力で行うことができず、エンジニアに依存しなければならない。
彼女は自己の身体(さらには記憶の一部さえ)を自分のものだと思うことができず、事実、それらは自分のものではない。
(以上、抜粋)
そして、筆者は、素子が、実は人工生命体だった「人形使い」との融合を果たし、アイデンティティ不安を解消するとして、この作品は「素子の自己実現の物語」と分析する。
特集の「超展示」は、東京・虎ノ門ヒルズ「TOKYO NODE GALLERY」で4月5日まで開催中の「攻殻機動隊展」の紹介。
イラストレーター・空山基によるコラボ作品も展示されているようだ。

「芸術新潮」2026年2月号で、「攻殻機動隊」特集の後に続くのが、その空山の展覧会の紹介記事「空山基の半世紀」という仕掛けもいい。
この記事の中で、空山が「攻殻機動隊」原作者・士郎政宗との付き合いを語っている。
「彼はもともと、ポルノの方が好きなんだよね。それで私、彼のファンだったの」という話が面白い。
「攻殻機動隊」の原作者は小難しい人物なのかなと思っていたけど、これを読んで、一気に親しみがわいた。
サルバドール・ダリとか、H・R・ギーガーの作品も思い浮かんだ。



