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「親指はなぜ太いのか」島泰三 初期人類の主食は肉食獣が食べ残した骨 手と口の特徴から主食が何かを探る

「親指はなぜ太いのか」

「親指はなぜ太いのか」島泰三

アウストラロピテクスのような初期の人類は、現代でたとえればライオンのような肉食獣が食べ残した骨を拾って主食にしていたという。

この結論が意外で、面白い。

 

 

骨を食べるという発想はなかった。

 

焼き鳥の軟骨(やげん軟骨。胸骨の先端)は、クニュッとした食感が好き。

唐揚げの軟骨(ひざ軟骨)は、ゴリゴリと堅いけども、これもまた、食感が楽しい。

 

 

ケンタッキーフライドチキンの細いあばら骨をかじってみたことはあるけど、美味しいとは思わなかった。

ましてや、骨付きカルビの骨を食べようとは思わない。

 

初期の人類は、なぜ、骨を食べようと思ったのか。

どうやって、骨を食べていたのか。

 

霊長類学者・島泰三の著者「親指はなぜ太いのか」によると、鮮新世(510万年前〜160万年前)に地球の寒冷化、乾燥化が進んだ。

森林で栄え、樹上で暮らしてきた類人猿の多くが滅びる中で、サバンナ、ステップといった草原に適応した類人猿が、初期の人類に進化した。

骨というニッチな食べ物を主食に見いだし、生き延びたという。

 

 

石で叩いて骨を砕くために、石をガッチリと握れるよう、太い親指が発達。

砕いた骨のかけらを口の中ですり潰せるように、骨より硬いエナメル質で歯が厚く覆われ、すり潰しに適した臼歯やあごの構造が発達したという。

さらには、「骨を砕く道具である石を持ったまま、骨を探し回れるよう、直立二足歩行をするようになった」との推論まで展開していく。

 

著者は、「霊長類の手や口の形は、主食の種類によって決まる」という仮説に基づき、初期の人類が何を主食としていたのか、その謎に迫る。

 

「親指はなぜ太いのか」より。霊長類のさまざまな手

「人類の歯は、骨をすり潰すことができるか」を自ら体験して検証しているのが、すごい。これぞ、研究者魂だ。

犬にやろうと思って残していた牛の肋骨を食べてみたという。

そのまま、かじっても歯が立たない。

包丁の背で叩いて、欠けたかけらを口に入れて噛みしめるうちに、弱い部分を見つけて、歯で骨を崩す要領がわかるという。

「焦らず、ゆっくりと、歯の間で骨のかけらを転がしていけばよい」と説く。

臼歯で前後左右にすり潰すことで、残りなく飲み込めるほどに軟らかくなったという。

 

「骨には十分な栄養がある」というデータにも驚いた。

そもそも、そんなことを調べる人がいたというのが、また、面白い。

 

富山県食品研究所が、食品としての可能性を探るために、家畜の骨の栄養を分析していたという(「畜骨の食化利用」、菅野三郎、1990年)。

本書「親指はなぜ太いのか」が要約して説くところによると、100グラムあたりの牛骨、豚骨、鶏骨に含まれるタンパク質とエネルギーは豚肩肉に引けをとらず、脂質はいずれも豚肩肉より高い。カルシウム、鉄など無機成分は豚肩肉とは比べものにならないほど高い、という。

 

「親指はなぜ太いのか」より。骨の栄養

本書の著者は、マダガスカルにすむサルの1種アイアイが、ラミーという大木の果実の種子の中身を食べる様子を見て、「口と手の形は主食の種類によって決まる」との仮説を考えついた。

アイアイの手の親指が太いのは、ラミーの果実をガッチリと握るため。

そして、大きな前歯で、果肉を剥ぎ、種子の先端を削って開ける。

その穴に、極端に細長い中指を差し込んで、中身をすくい取るという。

 

「親指はなぜ太いのか」より。アイアイ

本書は全9章の構成。

第1章でアイアイについて考察し、その後、ほかのサルの考察を経て、第7章「初期人類の主食は何か?」、第8章「直立二足歩行の起源」に至る。

 

私は、第1章を読んだ後、一気に飛ばして第7章、第8章、終章を読んだ。

第1章のアイアイの口と手の形と主食の関係は、前書き「はじめに」で結論が書いてあるうえに、順を追って説明する構成なので、スムーズに読めた。

第7章、第8章は、初期人類の主食について、種子食仮説、堅果食仮説、植物食仮説、根菜類仮説、スカベンジャー(残肉処理者)仮説といった、さまざま研究者の仮説をひとつひとつ検証していき、結論にたどり着く構成。

私のような短気な人間は、「えっ、これも違うの。じゃ、何? 早く言ってくれ」と、だんだん、イライラしてきたけど、あとで考えてみると、事件捜査みたいな楽しさがあるのかもしれない。

 

本書の核心は第7章なので、最初から、ここを読むという手もあるけど・・・

「はじめに」と、せめて第1章を読んでからのほうが、理解しやすく、入りやすいかもしれない。

 

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