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漫画家・本宮ひろ志(1947年~)は、壮大なストーリーのもとで、男女の恋愛を描くのがいい。
その代表格が「大いなる完」。
戦前戦後の激動の時代に、貧しい小作農の子・完が大物政治家にのし上がる物語。
完は、大地主の娘・高子に惚れ、同じ高さにまで登ろうと奮闘する。
高子も完に気があるのだけども、出会いの経緯やプライドの高さから素直になれず、拒絶し続ける。
2人は終盤、やっと心を通わせながらも、高子が病気で死んでしまうのが、せつない。
そして、大物政治家になった完が晩年、「(愛しい高子と一緒になれていたら)小作でも何でもええ。ほかには何もいらんかったよ」と、つぶやく。
このひと言を際立たせるための壮大な物語だったというのが、すごい。
「天地を喰らう」は、ファンタジー要素を入れた三国志。
玄徳(劉備)と曹操、そして、竜王の娘・嵐の三角関係が面白い。
玄徳と嵐は当初から心を通わせるのだけども、曹操が絡んできて、嵐の心が揺れる。
いずれ、玄徳と曹操が対決する時に、嵐はどうするのか。玄徳と曹操の戦いに、どう響くのか。
期待が膨らんだところで、物語は、途中から迷走し、まるで連載打ち切りのような中途半端な結末を迎えるのが、とても残念。
三角関係を軸に描き続けてほしかった。
その不完全燃焼からリベンジの思いもあったのだろうか。
漢の劉邦と楚の項羽の戦いを描く「赤龍王」は、劉邦と項羽、虞美人の三角関係がしっかりと物語の柱になっている。
のちに項羽の愛人となる虞美人が当初、劉邦と結ばれていたというオリジナル設定が秀逸。
劉邦と、劉邦に心を寄せながら項羽の愛人として死ぬ虞美人のすれ違いの悲恋がせつない。
油売りから戦国大名にのし上がったとされる斎藤道三の生涯を描く「猛き黄金の国 道三」も、恋愛模様が柱。
道三は、何人もの女性と出会い、惚れさせながら、結果として女性たちを利用する格好で、のし上がっていく。
プライドの高い貴族の美女・加奈が、道三に惚れながらも、道三をのし上がらせる策略のために、ほかの男の愛人になるのが、せつない。
そして、加奈の恋心の行方も、せつない。
恋愛要素抜きでも、本宮漫画は面白い。
織田信長が本能寺の変で死なずに生きていて、世界制覇に乗り出す「夢幻の如く」は、タイトル通り、壮大な夢物語だ。
本来は本能寺の変で死んでいたはずだから「オマケの人生だ」と割り切り、自由気ままに伸び伸びと生きる信長の姿が痛快。
それでいて、深い。東西の個性と融和を説く終盤の信長のセリフは見どころだ。
「実録たかされ」は、プロ野球・巨人のエース江川卓の伝記的な作品。
才能の大きさゆえに運命に翻弄された江川の人生を描きながら、本宮の人生観が随所にのぞく。
江川の才能なら、巨人に入らなくても、たった1人で巨人に匹敵する人気を得られたのではないか、とか。
高校時代の勢いそのままにプロで活躍する江川を見たかったという本宮の思いが、ひしひしと伝わってくる。
