てっちレビュー

新聞記者が綴る読書、音楽、映画・・・etc.あと、記者の仕事あれこれ

「デビルマン」永井豪 ヒロイン美樹が惨殺されるトラウマ漫画 明と了の友情と、了の秘めた愛情、その崩壊の描き方は物足りない 「新デビルマン」と合わせて読みたい (名作考察)

「デビルマン」

「デビルマン」永井豪

小学生の頃、読んで激しく衝撃を受けたトラウマ漫画。

ヒロインが惨殺される。

しかも、暴徒と化した人間たちになぶり殺しにされ、五体をバラバラにされた、とんでもない姿が描かれる。

これは小学生には刺激が大きかった。

漫画家・永井豪の代表作「デビルマン」。

 

「デビルマン」より。ヒロイン惨殺

私は幼児の頃、テレビアニメ版の「デビルマン」に最初に接していた。

テレビアニメ版は、「デーモンを裏切った正義のヒーロー・デビルマンがヒロイン・牧村美樹ら人間を守り、毎回襲ってくるデーモンの刺客と戦う」というストーリー。

デビルマン=不動明であることは内緒だったのに、最終回でばれてしまう展開には若干せつなさを感じたものの、幼児が見ても衝撃を受けるような内容は全くなかった。

勧善懲悪のヒーローは、単純な幼児の心をとらえた。

 

私は祖母にせがんで、明が着ているのと同じ服(黄色いTシャツで、胸に名前のイニシャルの「A」が書いてある)を、祖母の得意な編み物で再現してもらった。

祖母が変に気を利かせて、「A」ではなく、私の名前のイニシャルを入れて編んだため、私は「違う~!」と泣いたのを覚えている。

 


www.youtube.com

 

ちなみに、美樹は、幼児の頃の私にとって、テレビアニメ「魔女っ子メグちゃん」のメグとともに、憧れの美少女キャラだった(お転婆なところが共通する。そういうのが好みだったのかも。小学生くらいになると、テレビアニメ「ルパン三世」の峰不二子が憧れのお姉さんになった)。

それだけに、原作漫画での美樹惨殺は、衝撃が倍増した。

 

 

小学生の頃、「デビルマン」の原作漫画があると知り、自宅近くの書店で立ち読みして読破した。

主人公・不動明は、親友の飛鳥了に聞かされて、人類誕生以前に栄えたデーモンが復活することを知る。悪魔のような姿で、超能力を持つデーモンに対抗するため、明は、デーモンと合体して、その力を得ながらも、人間の心を保ち、人間を守る「デビルマン」になる───というストーリー。

 

テレビアニメ版と比べると、絵柄が怖い。

だいぶん、雰囲気が違うなと思いながら、読み進めた。

前半こそ、襲ってくるデーモンと不動明が戦うというテレビアニメ版に近い展開だったけど・・・

後半は、人間たちが、デーモンは人間と合体できると知って、隣人がいつデーモンになるって襲ってくるか、わからないと疑心暗鬼にかられ、中世ヨーロッパの「魔女狩り」のような行動に走るというハードな展開になった。

このあたりから「悪魔は人間の心の中にいる」というメッセージが色濃くなる。

自分が守ろうとした人間の醜い姿に、明が苦悩する様子も描かれる。

 

明と同様に、デーモンと合体しながらも人間の心を保つ「デビルマン」になった少女が人間にとらわれ、明が助ける場面が記憶に残っている。

助けてもらった少女が涙を流しながら、「仲間ね。私の仲間ね。わかるわ。悪魔ね。私と同じ悪魔なのね」と言うと、明がきっぱりと返す。

「違う。悪魔ではない。君も悪魔ではない」と。

 

「デビルマン」より。君も悪魔ではない

その明も、急に敵に回った了によって、デビルマンだと公表される。

美樹にも「明くん、悪魔に取り憑かれたの!私の目の前にいるのは、明くんの姿をした悪魔なの!」と恐れられる。

「違う!違う!信じてほしい。おれは人間なんだ」「人間の体を失ったおれだが、心はなくしていない。人間の心は・・・」と涙を流す明の姿がせつない。

明は、信じてくれた美樹と抱き合い、これが別れとなる。

ここまでは、まだ、よかった。

 

魔女狩りさながらに、普通の人間も「悪魔(デーモン)」の疑いをかけられると、捕まって拷問される。

そんな悪魔狩りの人間たちに失望した明は、叫ぶ。

「外道!貴様らこそ悪魔だ!」「おれは、体は悪魔になった・・・だが、人間の心を失わなかった!貴様らは人間の体を持ちながら悪魔に!悪魔になってしまったんだぞ!これが!これが!おれが身を捨てて守ろうとした人間の正体か!」と。

 

「デビルマン」より。これが人間の正体か

そして、美樹も、暴徒と化した近所の住民たちに魔女の疑いをかけられ、襲われる。

ギリギリで助かるのだろうと思って、ハラハラしながら読み進めたけども・・・

助かる気配はなく、美樹は絶体絶命のピンチに追い詰められ、絶望の表情を見せる。

これは、つらかった。

 

「デビルマン」より。美樹絶望

さらに、明の悲しみが追い打ちをかける。

明は「今の人間はケダモノ以下だ。おれには守るべき人間がない」と人間の醜さに嫌気が差すのだけども、美樹を思い出し、希望を見いだす。

「いや、いる。おれにはまだ、守るべき人がいる。君だけだ、美樹。君ひとりのために、おれは戦う」と。

ところが、駆けつけた明が見たのは、惨殺された美樹の姿。

これも、つらかった。

 

そして、その明さえも、最後にはデーモンとの戦いで死んでしまう。

主人公が死んでしまうというのも衝撃だった。

 

なんで、こんなにも希望を打ち砕く漫画を描くのだろう?と子どもの頃は、疑問に思ったものだ。

今なら、「人間は一歩間違うと、こんなことになってしまう。でも、みなさんはここまで愚かではないでしょう?」という作者のメッセージだと受け止めるけども・・・

 

本作「デビルマン」のもうひとつの見どころは、明と了の友情と、その崩壊。

了は、実はデーモンたちの頂点に立つサタンだった。

そして、了(サタン)は「両性生物」であり、明に惚れていた。

了が、明をデビルマンになるように仕向けたのは、人間を守るためではなく、人間を滅ぼした後のデーモンの世界に明を生き残らせたいという潜在意識が働いたためだった。

・・・という種明かしがある。

 

「デビルマン」より。君を生き残らせたかったらしい

「デビルマン」より。誤算は明を愛したこと

「デビルマン」より。両性生物だったから

これは、好みが分かれると思う。

私は、あまり好きではない。

了が明に惚れていたと言われても、本当か?と思う。

ここまで、そのような描写は全くなかったから、唐突すぎる。

惚れた理由を「両性生物だから」と説明しているのも、とってつけた感がある。

そんな説明より、惚れていた描写があったほうがよかった。

友情どころか、愛情があったにもかかわらず、立場の違いから対立するという悲劇性が加わって、物語の深みが増したと思う。

おそらく、作者もそう感じたのだろう。

 

漫画「デビルマン」は、外伝「新デビルマン」と、ぜひ、合わせて読んでほしい。

「新デビルマン」は、「デビルマン」で描ききれなかった明と了の友情と、了の秘めた愛情、その崩壊に焦点を当てていて、「デビルマン」を補う作品だ。

了が女性には興味がなく、明が好きだという心情もはっきりと描いてある。

了が、明の恋人にヤキモチを焼く姿を遠回しに描いたと思われる描写もある。

「新デビルマン」については、別稿で紹介する。

(本記事「デビルマン」投稿に伴い、2025年4月3日投稿の記事「新デビルマン」は全面的に書き直した)。

 

www.tetch-review.com

www.tetch-review.com