
「空山基ハイパーイラストレーションズ」
空山基は、好きなイラストレーターの1人。
一連のセクシーロボットが代表作。
ソニー製ペットロボット「AIBO」の初代のデザインを手がけたことでも、よく知られる。
作品集「空山基ハイパーイラストレーションズ」は、その画業を概観できる。

本書巻末のインタビューによると・・・
セクシーロボットの着想は、1978年にサントリーの広告イラストを手がけたことがきっかけ。
映画「スターウォーズ」のC-3POが使用料などの問題で使えなくなり、空山にロボットを描いてほしいとの依頼が舞い込んだ。
空山は、岩に座っている人間型ロボットと犬型ロボットのイラストを描いたという。
インタビュー記事に添えてある写真がそうだろうか。

空山は、もともと、ピンナップアートが好きらしい。
もっと、はっきりと言うと、女性のヌードを描くのが好き。
人間ではなく、セクシーロボットとして描くことで、過激な表現にも挑戦できた。
秀逸な工夫だと思うのは、セクシーロボットには局部がないこと。
だから、股間を強調するポーズの作品も発表できた。

本書のインタビューでは、その経緯を明かしている。
初めて描いたセクシーロボットの作品は、ラフスケッチ段階では、局部をソケットの受け口のような形、つまり、穴にするつもりだった。
ところが、ディレクターに「これは、まずいんじゃないか」と難色を示され、フタで覆ったという。
このフタが逆に局部を意識させるけども、イヤらしく感じさせない。
メタリックな肌を持つロボットだから、当然か。
イヤらしくないけども、セクシーだとは思う。

話が飛ぶけども・・・
江戸時代の日本では、男性がふんどし一丁で人前に出るとか、女性でも人前で行水したり、赤ちゃんに授乳したりとか、男女混浴の銭湯もあり、裸が日常にあふれていた。
だからだろうけど、エッチな絵画では、チラリズムが発達した。
素っ裸の女性を描くのではなく、胸をはだけているとか、裾が乱れているとか。
素っ裸でなく着衣だから、武家の奥様だとか、町娘だとか、身分がわかって、コスプレ的な想像力をも刺激したと思う。
一方で、当時のヨーロッパでは、女性のヌードを描くことはタブーだった。
1863年にマネが「オランピア」で女性のヌードを描いて、物議を醸すまで。
それ以前のヨーロッパでは、「これは、人間の女性ではなく、神話の女神です」という言い訳のもと、女性のヌードが描かれてきた。
1483年頃にボッティチェリが描いた「ヴィーナスの誕生」が先駆けだとされる。
おかげで、当時の人々は、「これは、女神を描いた芸術作品です」ということで、堂々とヌード画を眺めたり、飾ったりできたとも言われる。
そうしてみると、空山のセクシーロボットは「現代のヴィーナス」といったところか。
「これは、人間の女性ではなく、ロボットです」と。
ちなみに・・・
本書「空山基ハイパーイラストレーションズ」には収録されていなくて、私は、タッシェンが出している作品集(洋書)で見たけど、空山はセクシーロボットで「ヴィーナスの誕生」のパロディもやっているのが、面白い。


「これは、人間の女性ではない」という言い訳は、イラストレーターのロッキン・ジェリービーンもそうだな、と思い当たる。
ロッキン・ジェリービーンは、もっと際どい女性のヌードを描くのだけども、頭にツノがあったり、肌が緑色だったりして、悪魔や魔物みたいだ。
つまり、「これは、人間の女性ではなく、悪魔です」という理屈で、芸術作品として成り立ち、「エロかっこいい」と言われて人気を集めている。
なんだかんだ言って、やっぱり、セクシーな絵が好きな人間(男性だけ?)の気持ちは、昔も今も変わらないのだろうと、あらためて思う。


