高校を中退して、測量会社で働き始める前に、ごみ収集のアルバイトを1カ月ほどの短期でやったことがある。
まだ使えるものが、けっこう、ごみとして捨てられていて、興味深く思い、良い経験になった。
40年近く前、昭和末期のことだから、現在の状況には必ずしも当てはまらないと思うが、少し振り返ってみたい。
ごみを巻き込んで圧縮する装置を備えた収集車に乗り込み、自治会のごみ集積場所や事業所を回る。
私は、毎日、宝探しみたいな気持ちで出動していた。
たとえば、文具メーカーの工場のごみ置き場には、見た感じ、使えそうな商品が大量に置いてあった。
パッケージが変更になったとか、何らかの不具合があって、出荷できない不良品の扱いになったのだろうか。
スティックのりが大量に捨てられていた時は、いくつか、拾って帰った。
私は、多色セットの色鉛筆やパステルをただ眺めるのが好きなので、そういう商品を期待したけど、一度もなかった。
この工場では作っていなかったのだろう。
置いてあるのはフラットファイルが多かった。フラットファイルは、いらない。
一番楽しみだったのは、スーパーのごみ置き場。賞味期限切れの食品があった。
あん入りの餅とか、菓子パンとか、簡単につまめるものは拾って、収集車で移動中に食べていた。
職員の方々もやっていて、おやつみたいな感じだった。
私の感覚からすると、まだ食べられるものを捨てるなんて、信じられないことなので、本当は全部持ち帰りたいくらいだった。
スーパーで、「見切り」の品が値下げして売ってあるけども、それでも、売れ残ったものが、ごみ置き場行きだったのだろう。
ごみ置き場に持っていく前に、「本当に賞味期限切れです。それでもいいという人に差しあげます。お腹が痛くなっても自己責任でお願いします」みたいなコーナーをつくればいいのに、と思う。
ただ、まあ、食あたりのリスクがあるようなことは、やらないだろう。
ちなみに、私は、胃袋が強靭なのか、食あたりの経験があまりない。
牡蠣が大好きで、生牡蠣も食べるけど、あたったことはない。
タコの刺身を食べて、あたったことが一度あるだけだ。
あと、子どもの頃、腐ったゆで卵をうっかり食べたことがある。
雑巾みたいな味だった。
さすがの私も飲み込めず、すぐ吐き出した。
この経験がトラウマになり、ゆで卵はあまり好きではない。
・・・はずなのだが、コメダ珈琲でモーニングを頼む時、A(トーストとゆで卵)をいつも選んでいる。
おい、おまえ、ゆで卵、好きじゃないだろ?と自分にツッコミたくなるくらい不思議だ。
さらに話がそれるが・・・
私たち世代が子どもの頃、学校給食は、食べ残したらいけなかった。
時間内に食べられない子は、掃除の時間になっても、机を後ろに下げられて、泣きながら食べていた。
私は、食べるのが速かった。
少なくとも小学生の頃はクラスで一番速かった(自慢にもならないけど)。
昆布巻き、白あえ等、苦手なおかずもあったけど、完食していた。
食い意地が張っていたのだろう。
なお、私の父は子どもの頃におかずがなくて、ご飯に塩をかけて食べる日があるくらい貧乏暮らしを経験したそうだし、母は農家の生まれなので、2人とも「食べ物に感謝」という意識があった。
私が子どもの頃は、母の実家に曽祖母(母の祖母)が健在で、「米を踏んだら、目が潰れる」と言っていた。
だから、私は、茶碗からこぼれて、畳の上に落ちたご飯粒も拾って食べ、茶碗に一粒も残さず完食する癖が身に付いた。
ちなみに、私は、家族や知人が食べ残したものを食べるのにも抵抗がない。
昔、妻の家族のみなさん(義父母、義兄ら)と会食した時、妻の甥(義兄の息子)の食べ残しを私が食べて、驚かれたことがある。
妻や長女が相手なら、相手がいったん口に入れて噛んで、飲み込めずに口から出したものでも食べる(かたい肉とか)。
ファミリーレストランとか、ファーストフード店に行った時、誰かが食べ残して去ったのを見ると、もったいないな、といつも思っている(さすがに、それを食べるは実行しないけど)。
バイキング(ビュッフェ)のような食べ方は、私に言わせれば、狂気だ。
いろんな料理を選べるのは楽しいけど、食べ残しはどうなるのかな?と気になってしまう。
ブタのエサだろうか。
私のような人間は、悪人が毒を仕込んだ食べ物を置いていても、平気で食べて、毒にやられるタイプだと思う。
ごみ収集の話に戻す。
家庭から生ごみを出す時、しっかり水切りしましょうということになっている。
これは、重量や悪臭を減らす効果があるし、別の点でも、収集する側にとっては、重要な関心事だ。
収集車の装置がごみ袋を巻き込む時に、圧縮されて、生ごみの水分が飛び出すことがあるからだ。
私がバイトで手伝った時季は、夏場だったので、ごみ袋の中身に、スイカがやたら多かった。しかも、ちゃんと水切りされていない。
なので、装置が巻き込む時に、ごみ袋が破れて、スイカの果汁が噴き出すことがよくあった。
収集作業員には、これをかわす技も求められる。
私は、かわせず、何度もやられた。スイカの果汁は腐っているうえ、同梱された他の生ごみのにおいも混じっていて、すごい悪臭。これは、つらかった。
みんなが出したごみを片付けてくださっている収集員の方々には、お疲れさまという気持ちだ。
今週のお題「こんなバイトをしてました」





