妻の手術は無事に予定通り終わった。
まずは、ひと安心。
ただし、直前の詳しい説明で知ったけど、2〜3カ月後にもう1回、手術をしないといけない。
記録のため、おさらいしておくと───
妻(56歳)は2025年夏、職場の定期検診をきっかけに大腸がんが判明。
抗がん剤治療と放射線治療を経て、腫瘍が小さくなり、手術できる状態になった。
12月19日に入院。22日に手術を受けた。2〜3週間後に退院予定。
19日に手術の詳しい説明があった。
私は、どうしても自分でやらないといけない選挙関連の取材があって、休めなかった。
長女は研修医で、医学の基礎知識がある。
長女が説明を聞いたほうがいいだろうと思い、19日の付き添いは長女にお願いした。
あとで長女に聞いたところによると───
手術の内容は、腫瘍の周辺の大腸を切って取り除き、残った部分をつなぐ。
これまでの放射線治療で大腸が弱っているうえ、つないだところにしばらくは負担をかけないほうがいいので、一時的に人工肛門とする。
具体的には、小腸の途中を切って左の脇腹に出し、人工肛門の器具?を付ける。
大腸が元気になったら、人工肛門を外して、小腸を元通りにつなぐ2回目の手術をする───という計画。
開腹しない腹腔鏡手術。
へそのあたりと左右の脇腹に2カ所ずつ、計5カ所に小さな穴を開ける。
ガスを入れて腹を膨らませ、空間を作り、作業がしやすくする。
へそのあたりに開けた穴から、棒の先にカメラ等が付いた器具を入れ、左右の脇腹の穴から、主治医と助手的な医師が棒の先に小さいハサミが付いたような器具を入れて、手術をする。
このハサミが付いたような器具で、腹の中をかき分けながら、患部にたどり着き、患部を切る。縫う時はこの器具の先端をピンセット的な部品に取り替えて、やる。
難しいので、慣れが必要だし、時間がかかるという。
カメラ等が付いた器具を持つのは、別の助手的な医師で、主治医らのやることを見て、学ぶのだとか。
予定では、22日の午前9時ごろに麻酔をかけ、10時ごろ手術開始。手術にかかる時間は順調に進んでも6〜7時間とのこと。
せっかくなので、「そもそも、腹の中は内臓と内臓の隙間がどうなっているのか」とか「どうやって、かき分けるのか」とか素朴な疑問も、長女に尋ねた。
かき分け方について、長女が「鶏肉の皮を剥がすみたいに、上手に引っ張ったら、剥がせる」みたいなことを言っていたのが、面白かった。
長女によると、過去に開腹手術を受けたことがある人は、腹の中が変に癒着していて、上手に剥がせない可能性もあるのだとか。
妻は長女を出産する時、帝王切開だったので、開腹手術を受けた経験あり。
長女は妻の腹の中も「癒着の可能性がある」などと脅すようなことを言っていた。
(長女が帝王切開で生まれたことは以下の記事「恋愛の基礎」の中で触れている)
あと、長女によると、呼吸器より消化器の手術のほうが、時間が多くかかる。
消化器のほうがデリケートで取り扱いが難しいからだという。
特に腸は弱い臓器で、変な触り方をしただけで弱って傷む。
縫う時も極細の糸を使うのだとか。
たとえば、大腸は、薄い肉のパイプの外側に、ふわふわした脂肪が付いて守られている。
焼き肉のホルモン(大腸)を思い浮かべるといいとのこと。
ちなみに、私は、焼き肉だと、カルビやロースより、ホルモン(大腸)やレバーが好き。
鉄板焼き店や居酒屋では、ホルモン炒めやレバニラ炒めをよく頼む。
過去記事「なぜ、日本人はラーメンに引かれるのか」の中で触れた通り、鳥取市には「ホルモンそば」というローカルフードがあり、大好物だ。
焼き鳥だと、皮とレバーが好き。上手に焼くと、とても美味しい。
残念ながら、たいていの焼き鳥店が下手で、皮はグニャグニャでゴムみたい、レバーはパサパサ。
鳥取駅南にある店「焼き鳥たるや」がおすすめ。
皮はサックリした食感。レバー(白きも)はちゃんと火を通しつつ、生に近い食感で、ゴマ油がかけてあるのもいい。
手術に話を戻す。
長女によると、大腸を触る時には、ふわふわした脂肪の部分をつまむ。
薄い肉のパイプの部分は弱いので、触らないようにする。
うかつに触ると、弱って穴が開いたりするという。
妻の手術でも「変な触り方をして大腸が傷んだら、もうダメで、一生、人工肛門になる」と長女が脅すので、私は、ちょっと不安になった。
手術をする22日は、私が休んで付き添った。
手術中に何かあったら、医師の説明を受けたり、同意書を書いたりしないといけないので、「手術が終わるまで、病院に待機していろ」とのことだった。
「午前8時半までに来い」と言われていたので、8時15分ごろに病院に着き、ずっと待機していた。病院の食堂で。
ノートパソコンを持ち込んで、ブログの記事を書いて過ごした。
午後3時25分ごろ、「手術が終わったので、説明を聞きに来い」と呼び出しがあり、手術室の近くの相談室に行った。
主治医の先生が、赤い塊の入ったタッパーみたいな容器を持って入ってきたので、あ、切り取った患部だなとわかった。
先生は「無事に終わった」と言って、いきなり、タッパーを開け、切り取った大腸を見せながら、説明を始めた。
切り取った大腸は、目測で長さ20センチくらい。
タテに切り開いて内側が見えるようにしてあった。
実際に目の当たりにすると、やはり、焼き肉のホルモン(大腸)によく似ていた。
あとで長女に聞いたところでは、おそらく直腸からS状結腸まで。
腫瘍は直腸の肛門近くにあるので、そこだけ切れば、もっと短いけども、周辺のリンパもがんにやられているため、取り除かないといけない。
リンパは血管に絡んでいるので、その血管ごとリンパを取ることになる。
そうすると、血管を取られたあたりのS状結腸が機能しなくなるから、そこらを含めて長めに切ったのだろうとのこと。
先生は「ここに腫瘍があったけど、だいぶん、小さくなっている」などと現物を示しながら説明してくれるので、わかりやすかった。
それはいいけど、このように、いきなり、切り取った患部を見せるものなのだろうか。
あとで長女に聞いてみると、「そういうのが苦手な人もいるので、普通は、『見ますか?』って聞いて、ワンクッション置くけどね」とのこと。
おおらかな先生なのかもしれない。
主治医の先生と顔を合わせるのは、これが初めて。
会うなり「息子さんですか?」と言われ、頬が緩んだ。
私(54歳)は、実際の年齢より若く見られることが多いけど、さすがに息子さんはないだろう。
ちなみに、長女(28歳)は小柄で童顔なので、だいたい、若く見られる。医学生だと思われて「学生さん?」と患者に言われることがよくあるそうだ。
先生は19日の説明の時に長女と会っているから、私が「息子さん」だったら、長女ときょうだいになってしまうけど、どういう感覚をしているんだと思った。
あとで、妻に話したら、笑っていた。
切り取った患部がホルモンに見えた話もしたら、笑っていた。
笑うと、手術したおなかが痛いから、やめて、と笑っていた。
元気そうで、良かった。
実は、相手の年齢を推察するのは、私も苦手。だから、先生を笑えない。
だいたい、実際の年齢より年上に見積もってしまうので、注意が必要だ。
以前、報道各社の支社・支局長クラスの懇親会があった時も失礼をした。
だいたい、皆さん、年上の重鎮だろうと思っていたけど、たまたま、年齢が話題になり、聞いてみると、ほぼ同世代。
向かいの席の方(男性)は、この集まりの中では若い部類で、私より5歳くらい下だろうと思っていたけど、2歳下で、私とあまり変わらなかった。
申し訳なかったのが、隣の席の方(女性)。
私より2歳下だったけど、5歳くらい上だと思っていたので、その旨をうっかり口に出してしまったら、笑いながらも心外だという様子を示された。
しまった、と思い、「いや、貫禄があるので」と、とっさに取り繕った。
よく考えると、この女性は太っているので、さらに傷を広げたかも、と気づいたけど、手遅れだった。
年齢は怖い。うかつに触れないほうがいい。大腸と一緒だ。

