てっちレビュー

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「君たちはどう生きるか」 ファンタジー感はあり、そこそこ楽しめる 少年がつらい現実があっても受け止め、前向きに生きていこうと思い直す物語

「君たちはどう生きるか」

このたびの盆期間中、私は9、10日と16、17日が休みで、11~15日は出番。

9、10日は単身赴任先から自宅に帰り、盆を迎える準備等の用事をした。

 

妻の実家に行き、仏壇の回りの掃除や生花の飾り付け、お供え物の設置を手伝った。

妻の実家の仏壇は、妻が産まれる前に1~2歳の幼さで亡くなられたという義姉(妻の姉)のものだ。

 

義父はすっかり衰えられて介護が必要になり高齢者福祉施設に入所中。

義母は歩くことができなくなり、私たち夫婦の家に同居してもらっていて、妻がお世話をしている状態だ。

失礼ながら、お二方とも、もうお迎えが来てもおかしくないご高齢になっておられ、妻の実家の仏壇やお墓(義姉のもの)をどうするか問題が喫緊の課題。

妻と義兄との間では、仏壇やお墓は片付けようという方向で、協議が進んでいるようだ(義兄が仏壇とお墓の面倒を見る意思がないらしい)。

 

ちなみに、私の両親は、妻のご両親よりは若い(といっても、後期高齢者だが)。

父は高血圧、母は糖尿病で通院治療を受けているが、今のところ、2人とも身の回りのことは自分でできる状態で、実家で細々と暮らしている。

私の弟が実家に近い町に住んでおり、いざとなったら、頼りたいところ。

ただし、義妹(弟の妻)が一人娘であり、弟はいわゆる「マスオさん状態」のため、義妹のご両親のお世話は不可避。

どこまで頼っていいものか、わからない。

 

私たち夫婦の子どもは、長女だけであり、将来、長女になるべく負担をかけないで済むように、私たち夫婦は、墓はいらないね、といったことを話している。

 

このような年寄り臭い話題を考えないといけないということは、私も、妻も、そのような年齢になってきたということだ。

 

そのようなことを考えていた時に見た映画が「君たちはどう生きるか」(2023年、スタジオジブリ)。

映画好きの妻がテレビ放映の映画を録画していて、私が休みで帰った時に一緒に見る。

今年は忙しくてなかなか休めず、録りためた映画がかなりあるため、9、10日で5本ほど見たうちの1本だ。

 


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(以下、ネタバレもあるので、見ていない方はご注意を)。

 

「君たちはどう生きるか」について、評価は賛否両論あるようだ。

私は、そこそこ楽しめた。妻は、「なんか、よくわからない」と言っていた。

作家ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」を見ているような感じと言ったら、いいだろうか。

新鮮さはあまり感じなかったが、ファンタジー感はたっぷりある。

ストーリーというより、世界観を楽しむ作品だ。

 

 

細かいストーリーは消化不良のところが多々あるので、ストーリーには、あまりこだわらないほうがいいかもしれない。

母の死をなかなか受け入れられず、すねていた少年が、つらい現実があっても前向きに生きていこうと思い直すという作品。

そう、シンプルにとらえたら、いいと思う。

 

主人公の少年・眞人は、火災で母・ヒサコを失う。

父は、母の妹の夏子と再婚するが、眞人は、ヒサコの死をなかなか受け入れられず、継母の夏子に、打ち解けられない。

そんな時に、人間の言葉をしゃべる謎のアオサギに「母君のご遺体を見ていらっしゃらないでしょう。あなたの助けを待っていますぞ」と誘われ、不思議な「下の世界」に行く。

 

結論から言うと、「下の世界」では、子どもの頃に神隠しにあったヒサコ、つまり、子どもの頃のヒサコが「ヒミ」という少女として出てくる。

現在のヒサコは、やはり、火災で死んだのだ。

眞人を誘ったアオサギの言葉は、母の死を受け入れたくない、眞人の心の言葉だったのだろうと思った。

 

現実の世界というか、上の世界で夏子は、眞人がなかなか打ち解けないことに、心を痛めていた。

下の世界に迷い込んだ夏子が眞人に対して、「大嫌い」と叫ぶのは、夏子の心情をうすうす察している眞人の無意識の声なのだろうと思った。

 

下の世界にたどり着いて早々に、「我ヲ學ブ者ハ死ス」と門に書かれた墓が出てくる。黄泉の国の入り口かと思わせ、何だか、意味深だが、その後は、もう出てこない。

 

下の世界では、ワラワラという不思議な生き物(?)がいて、上の世界で生まれる人間の魂になるという。

下の世界が上の世界を支えているという構図は、同じ宮崎駿の漫画で、映画化された「風の谷のナウシカ」を思い出させた。

 

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擬人化されたインコの大群に襲われるというのは、擬人化されたトランプの大群に襲われる「不思議の国のアリス」そのままという感じ。

 

下の世界の主は、下の世界のバランスを保つ役目を果たしており、その役目を眞人に継いでもらおうとするが、眞人は、きっぱりと断る。

このあたりは、漫画家・諸星大二郎の名作「マッドメン」を思い出した。

 

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ヒミも、現実の世界に戻る。

眞人は、ヒミがヒサコであることに既に気づいているから、現実の世界に戻ると「火災で死んでしまう」と告げるが、ヒミは「これから、あなたのお母さんになるんだから」と言って、現実の世界に戻る。

眞人に前向きに生きる気持ちを与える重要なシーンではある。

 

ここは、もう少し工夫したほうがよかったのではないかと思い、不満だ。

ここにきて、ヒミが、眞人は息子であり、自分が火災で死ぬと知っていることになっているのは、安易だと思う。このセリフも興ざめだ。

「不思議の国のアリス」みたいに、夢オチだったら、まだわかるけど、そうでもない。

ヒミがヒサコであることを伏せて、最後にわかる展開のほうがまだよかったと思う。

もちろん、最後のセリフは「あなたのお母さんになるんだから」とは違うものにして。

 

アニメ映画「かがみの孤城」(2022年)みたいな感じだと後味が爽やかだと思う(不思議な世界で一緒に過ごしたあの人が現実世界のあの人だったと最後にわかる)。

 

かがみの孤城

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