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「秒速5センチメートル」 1人の女性にこだわりすぎた男性が別の女性を悲しませる物語? 私は花苗に感情移入 実写版は微妙な味わいをどう表現

「秒速5センチメートル」

(ネタバレあり。見ていない方は、ご注意を)

 

アニメ映画「秒速5センチメートル」(2007年)は、好みが分かれる作品だろう。

数年前、長女に勧められ、ヤフオクでDVDをまとめ買いした新海誠作品のひとつ。

 

同じ新海作品なら「君の名は。」(2016年)のほうがハッピーエンドで、後味爽やかだな、というのが、私の率直な感想。

「秒速5センチメートル」は、ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、よくわからない。

長女に聞くと、やはり「意味がよくわからなかった」という。

 

長女と年齢の近い会社の後輩(男性)に聞いたら、新海作品の中でも屈指の傑作だと絶賛していた。

子どもの頃から、ずっと、1人の女性を思い続けた主人公(男性)が、ようやく、その思いを過去の思い出として整理し、前を向いて歩きだす物語だ、と。

 

「秒速5センチメートル」は、間もなく、実写版が公開される。

生身の人間の演技で、この微妙な味わいを、どう表現するのだろうか。

気になるところだ。

 


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アニメ映画「秒速5センチメートル」は、連続する短編3編で構成する。

簡単に、あらすじを紹介する。

 

第1話「桜花抄」

東京の男子小学生、貴樹が主人公。

心を通わせていたクラスメイトの女子、明里が栃木に転校。文通を重ねる。

中学生の頃、貴樹が鹿児島に転校することになり、もう明里に会えなくなるかもと考えて、栃木に会いに行く。

トラブルに見舞われながらも、栃木で再会した2人は、良い雰囲気。

だけども、2人は、今後の付き合いを約束するわけでもなく、第1話終了。

 

私は、この時点で、エーッ?と思った。

貴樹よ。おまえ、何しに栃木まで行ったんだ、と。

血気盛んな中学生とは思えない、この淡白な対応は、何なんだ、と。

しかも、両思い確実なのに、と。

まあ、離れ離れになるんだし、中学生では仕方ないのか・・・

 

第2話「コスモナウト」

鹿児島の女子高校生、花苗が主人公。

中学生の頃、東京から転校してきたクラスメイトの男子、貴樹に恋心を抱きながらも伝えられずにいた。

趣味のサーフィンがうまくいって、調子づき、この勢いで告白を、と決意。

しかし、告白しようとした瞬間、貴樹から無言の拒絶を感じて、思いを伝えられず、泣きながら帰る。

花苗は、貴樹が自分のことなど見ていないと悟りながらも、貴樹が好きだという思いを噛みしめる。

第2話終了。

 

私は、花苗に感情移入した。

かわいそうすぎる。

 

貴樹の頭に明里しかいないのは、わからないでもない。

私も、小学5、6年の時のクラスメイトへの初恋(片思い)を大学卒業、就職で故郷を離れるまで、長々と引きずったから。

しかも、私の場合、はっきりと告白して振られていたのに。

 

花苗みたいな相手は、私にもいた。

のちに取り返しがつかなくなってから知ったことだが、大学時代のサークルの後輩が私に恋愛感情を抱いていたらしい。

あと、これも、相手が転校してから知ったことだが、小学5、6年の時の別のクラスメイトが、私に恋愛感情を抱いていたらしい。

(私の苦い初恋は記事「『大いなる完』本宮ひろ志」で、私が恋愛感情を寄せられた件は記事「天真爛漫な音楽を考えてみた」で、それぞれ書いた通り)

 

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おい、貴樹よ。無駄に1人の女性にこだわるとな、別の女性を泣かせるんだわ。それで、自分が幸せになるわけでもないしな。わかっとるか?

私も、その頃は、わからなかった。

この物語を見たら、私の大学時代の後輩や小学生時代の別のクラスメイトも、花苗と同じくらい、心を痛めていたかもしれないと想像した。

大変申し訳ない気持ちで、いっぱいだ。

 

第3話「秒速5センチメートル」

東京で社会人となった貴樹が主人公。

付き合っていた彼女、理紗から別れを告げられる。

理紗は、貴樹の心が自分に向いていないことを薄々、感じ取っていたからだ。

一方で、その頃、明里は、貴樹のことはとっくの昔に忘れ、別の男性と仲良くやっていた。

貴樹が、ある日、外を歩いていて踏切に差しかかった時、向こうから、明里によく似た女性が近づいてくる(おそらく、明里本人)。

2人は、すれ違う瞬間、何かを感じる。

踏切を渡り終えて2人が振り返った時、プァーッと列車が通って2人の視界をさえぎる。

列車が通り過ぎた後、そこに女性(明里)の姿はなく、貴樹は、何かを感じて、フッと微笑み、歩きだす。

第3話終了。

 

は?と思った。

2人とも何かを感じたのに、いやに、あっさり。

明里「貴樹? いま、どうしてるの?」

貴樹「いや、ちょっと。明里に会えて、うれしいよ」

明里「えーっ!(ちょっと、うれしい)」

・・・みたいな展開を期待したのに、これかい。

まあ、明里の心に、もう貴樹はいないから、仕方ないか。

世の中、そういうものだ。

 

会社の後輩の解説によると、貴樹は、これで、明里への思いを過去の思い出として心に区切りを付け、前向きに歩き始めたのだという。

 

私としては・・・不完全燃焼の物語。

貴樹はいいかもしれない。

初恋が吹っ切れて新しい人生を歩み出した、で。

でも、花苗は、どうなる?

これだと、ある男性が1人の女性にこだわり続けたせいで、別の女性を悲しませた物語で、終わってしまう。

 

貴樹が踏切を渡って歩いていった先に、花苗がいて、2人が再会し、今も貴樹に寄せ続けていた花苗の思いが叶う、という展開なら、私は納得。

あるいは、踏切を渡った貴樹がスマホを取り出し、花苗に電話するとか。

ダメ?