てっちレビュー

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「時をかける少女」(劇場版アニメ) 告白する側とされる側の心を丁寧に描くのがいい ラストの解釈、2人は再会すると考えたい

「時をかける少女」(劇場版アニメ)

(ネタバレあり。見ていない方はご注意を)

 

私の初恋は片想いで、失恋だった。

相手は小学5〜6年の時に同じクラスになった同級生。

中学時代は接点がなかった。

たまに見かける程度。

高校は別々になると知り、もう会えなくなると思って、中学卒業後の春休みに告白した。

 

彼女の自宅に電話して「会って話したいことがある」と呼び出した。

ドキドキして、なかなか電話をかけられなかったのを覚えている。

ま、電話の時点でこちらの用件は薄々伝わったと思う。

よく出てきてくれたものだ。

ストレートに「好き。付き合って」と告白。

「片想いだけど、ほかに好きな人がいる」と、あっさりと断られて、辛かった。

 

今思えば、特攻隊みたいな告白だ。

古代中国の兵法家・孫子は「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」と、情報収集&分析の大切さを説く。

当時の私は、何らリサーチを行わず、勝算もなかった。

「もしかしたら、大丈夫じゃないか」という淡い期待があっただけだ。

私は、思っていることがすぐ態度に出る性格だから、小学生の時点で、好意を前面に出していて、周囲に冷やかされるくらいだった。

戯れあって良い雰囲気になったこともあったので、「もしかしたら」と淡い期待があったわけだ。

 

今の私なら、こう考える。

「もし、彼女にその気があったのなら、小学生時点で、もっと関係が深まっていたはずだろう」と。

「(たまたま彼女が警戒心を緩めて良い雰囲気になった時に一気に攻め込む等)好機を逃さず詰めきれなかった私に敗因があるかもしれない」と。

「中学時代に何もなかった時点で、脈はなかったんじゃないの?」と。

告白されて、彼女は「今さら、何言ってんの?」という気持ちだったに違いない。

この手の物事は、機をとらえた適切なアプローチが肝心なのだろう。

孫子が説く「風林火山」の心構え(機をとらえて素早く、相手に悟られないよう動き、徹底的に攻める。機が熟していない時は慌てない)。

当時の私には、わからなかった。

 

細田守が手がけた劇場版アニメ「時をかける少女」(2006年)を久しぶりに見た。

子どもの頃の告白を思い出し、胸が締めつけられるような気持ちだ。

 


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この物語では、お転婆な高校生女子の真琴が、思わぬ経緯で、時を越えるタイムリープ能力を身に付ける。

カラオケボックスで何回も過去に戻って声が枯れるほど歌いまくるといった、おちゃらけぶりも楽しいのだけど・・・

一緒にキャッチボールを楽しむ男友達の千昭、功介と展開する恋愛模様が見どころ。

告白する側の気持ちと告白された側の気持ちを丁寧に描くのが面白い。

真琴と千昭が物語の軸。

「好きだと告白されて、好きになるか」が論点になるのも興味深い。

 

ある時、功介は、後輩の女子・果穂に告白されて断る。

千昭は、自転車2人乗りで真琴を家に送る途中、功介が告白された件が話題になったのに乗じて、真琴に告白する。

 

そのあたりの会話を抜粋してみる。

 

(功介が果穂に告白されて断り、真琴はホッとした様子)

真琴 付き合ったら彼女大事にするでしょ

千昭 そういうやつだ

真琴 なんだかなあ、ずっと3人でいられる気がしてたんだよね。遅刻して功介に怒られて、球取れなくて千昭にナメられて

千昭 (沈黙)

真琴 ん?

千昭 俺と・・・付き合えば?

真琴 止めて。ちょっと止めて。何それ?

千昭 は?

真琴 今の何?

千晃 付き合おう

真琴 どっから、そういう話になったのよ?

千昭 功介に彼女ができたらって話。俺、そんなに顔も悪くないだろ?

真琴 マジ?

千昭 マジ

(以上、抜粋)

 

千昭の告白は、見事だと思う。

機をとらえ「疾きこと風の如く」だ。

頭の回転が鈍い私には無理。

千昭は、実は、真琴を好きで、今まで言い出せなかったのだ。

この純情が、可愛らしい。

これは、応援したくなる。

真琴は、千昭を恋愛対象と見ていなかったから、戸惑う。

千昭は、ひるまずに、攻勢をかける。

「侵略すること火の如く」だ。

 

この局面で、困惑に耐えられなくなった真琴は、あろうことか、タイムリープ能力を発動して過去に戻り、千昭の告白をなかったことにしてしまう。

これは、告白した側にとって殺生だ。

 

私なら、とりあえず、受け入れる。

実際に、そうだった。

 

独身の頃(妻と出会う前)、同僚と飲みに行った時に、接客してくれた店員の女性に気に入られた。

後日、連絡があり、付き合うことになった。

一生懸命に尽くしてくれるので、だんだん、情がわいた。

ただ、私の愛情が足りなかったのかもしれない。

彼女は、そう言って、去っていった。

彼女にとって、私が告白を受け入れたことは、良かったのだろうか。

断ったほうが良かったのだろうか。

 

私は、振られた形になり、辛かった。

付き合ううちに情がわいたのは事実なので、もし、付き合い続けていたら、もっと、好きになったかもしれない。

まあ、縁がなかったと思うしかない。

 

鈍い私でもわかるように、はっきりと告白されていないので、何もないまま終わったけど、のちに相手が私を好きだったと知ったケースもある。

相手は大学のサークルの後輩。

以前、記事「天真爛漫な音楽」で書いたので、詳しくは繰り返さないけども。

もし、私にもわかるように告白されていたら、むげにはしなかったと思う。

彼女が私を好きだったと知ってからは、彼女が何だか魅力的に見えてきて、モヤモヤしたものだ。

これも、縁がなかったと思うしかない。

 

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告白は、するほうの勇気が問われ、されるほうの度量が問われる。

そして、告白は、大なり小なり、されたほうの心を揺らす。

私を振った初恋の相手の心も、少しは揺らしたようで、のちに腐れ縁みたいな変なことになった。

これは記事「大いなる完」で触れた通り。

 

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劇場版アニメ「時をかける少女」では、真琴は、タイムリープによって、千昭の告白をなかったことにしたけど、妙に意識するようになってしまい、距離を置くようになる。

千昭は、なぜ、真琴が距離を置くのか、わからず、悩む。

その間隙を突いて、ひそかに千昭に思いを寄せていた友梨(真琴の親友)が、千昭に接近する。

これもまた、「疾きこと風の如し」だ。

千昭と友梨は良い感じになり、その姿を見て、真琴は、ヤキモチを焼く。

「もう!何よ、あいつ。私に好きだって言ったくせに」と。

 

その後、悲しい事件が起き、それをなかったことにするために、千昭がタイムリープ能力を使う。

実は、千昭は、遠い未来から来た人間。

真琴にタイムリープ能力が付いたのは、千昭が持ってきた装置を、真琴が気づかずに使ってしまったためだったことも、明らかになる。

千昭がこの時代に来たのは、未来では失われている、ある絵を見るためだった。

未来から来たことを真琴に明かしてしまった千昭は、掟だと言って、みんなの前から姿を消す。

 

ここに来て、募る千昭への思い。

さらに、功介が追い打ちをかける。

「千昭は、真琴を好きだった」と。

真琴が、「千昭が、そう言ったの?」と問うと、功介は言う。

「見てりゃわかるさ。気づかなかったか?まあ、真琴はそういうの、苦手だもんな。だから、言いだせなかったんじゃねえのかな」と。

 

私もそういうの苦手だから、この言葉は刺さった。

 

真琴は、千昭の告白をなかったことにしてしまったことを、深く悔やむ。

さらに、千昭を好きだと確信するに至る。

 

いろいろとあって、真琴と千昭は再会し、明確に告白するわけではないけど、お互いの愛情を確かめ合う。

しかし、千昭は未来に帰らないといけない。

目当ての絵を見ないままに。

 

真琴は言う。

「あの絵、未来へ帰って見てね。もう、なくなったり、燃えたりしない。千昭の時代にも残ってるように何とかしてみる」と。

千昭は真琴を抱き寄せて言う。

「未来で待ってる」と。

真琴は答える。

「うん、すぐ行く。走って行く」と。

 

このラストには、いろいろと解釈があると思う。

 

真琴はタイムリープ能力を使い果たしていて、千昭が帰る遠い未来には行けない。

だから、2人の最後のやり取りは、もう2度と会えないことをわかったうえで「いつまでも、あなたを思い続ける」という意味だと、解釈するファンもいる。

なかなか、素敵な解釈だ。

 

私は、2人は再会すると考えたい。

真琴が普通に生きてたどり着ける未来に、千昭が遠い未来でタイムリープ能力を補充してやってくるという方法で。

真琴が「あの絵」を未来に残すために奮闘しているところに。

 

恋愛漫画の名作「Bバージン」(山田玲司)的なラストを想像し、胸が熱くなった。

 

<補足説明・「Bバージン」とは>

「Bバージン」は、ヒロインのユイに片想いしている男・秋が主人公。

いろいろと紆余曲折があって、最終的に2人は相思相愛になるけど、やむを得ない事情により、秋はユイを置いて、行方をくらましてしまう。

その後、秋が一人前の生物学者になろうと海外で修業しているところに、ユイが探し当てて訪ねてくるというラスト。

これは感涙ものだ。

 

 

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