「戦闘メカ ザブングル」
男×女2人の三角関係が見どころのひとつなのだけど、最後に結ばれる男女の会話が残酷だ。
テレビアニメ「戦闘メカ ザブングル」。
熱血漢の主人公ジロンをめぐって、お転婆なお嬢さまエルチと、勝ち気で姉御肌のラグが恋のさや当てを繰り広げる。
エルチとラグは互いに恋のライバルだと思っているけども・・・
ジロンは、当初からエルチに心を寄せ、ラグのことは戦友としか思っていない。
最後に結ばれたジロンとエルチの会話は、こうだ。
エルチ
ラグがかわいそうよ。
ジロン
ラグは強い子だ。
翻訳すると「あの子、あんたに惚れてるよ」「ほっといても大丈夫だよ」という感じか。
これは、ひどい。
どちらも魅力的なキャラクターなのに、ここは、思いやりがなさ過ぎる。
特にジロン。
劇場版アニメ「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」(1984年)の一条輝のセリフに匹敵する、ひどさだ(テレビ版だったかも)。
輝は、わがままなアイドル歌手ミンメイ、家庭的な地味子の未沙との三角関係の末、未沙を選ぶ。
ミンメイは、泣きながら走り去る。
未沙は、人類を危機から救う歌を見つけていて、これをミンメイに歌わせたい。
その意をくんだ輝が、ミンメイを追う。
やっぱり、来てくれたのねと機嫌を直してミンメイが振り返ると、輝は「はい、これ」とばかりに歌詞カードを差し出す。
ミンメイ激怒。「なんで、あのひとが見つけた歌を歌わなきゃいけないのよ!」と。
そこで、輝がいろいろ説いたうえに放つ、トドメのひと言。
「君には歌があるじゃないか」(おまえの存在価値はそこだろ?)。
「ラグは強い子だ」は、「君には歌があるじゃないか」と同等の破壊力を秘める。
ラグが聞いたら、絶対にショックを受ける。
さすがに、ひどいと思ったのだろうか。
劇場版アニメ「サブングルグラフィティ」(1983年)では、ジロン×エルチの会話のこの部分は割愛されていた。
冒頭に書いたように、ジロンは当初からエルチに惹かれ、ラグのことは戦友としか思っていない。
そして、ラグ自身も、気の強さが災いして、その殻を破れなかった。
三角関係に絞って、この物語をもう少し紹介してみる。
この物語は、人類の文明がいったん滅んだ後の地球が舞台。
ラグは、盗賊団のリーダーで、ふとしたことからジロンに危機を救われて出会う。
なぜ、助けてくれたのかと問うと、ジロンがしれっと答える。
「おやじが、女は大事にしろ、って」と。
ラグは、心の奥底の「乙女心」を刺激されて、一瞬、キュンとなる。
けど、すぐに荒っぽい態度に戻る。
照れ隠しだったのだろうけど・・・まず、ここで機を逸している。
女性らしい魅力をアピールする好機だったのに、だ。
ちなみに、脇役の女性トロン・ミランは一方的にジロンをたたきのめすほど腕っ節が強いのだけど、色っぽい流し目で、ジロンを油断させる技も繰り出す。
ラグには、こうした芸当ができなかった。
エルチは適宜、危なっかしい行動も取り、ジロンの「おれが付いていてやらなきゃ心」をくすぐる。
ジロンに無視され、すねて、仲間たちの元を飛び出す逸話もある。
そして、美形の男子エル・コンドルと出会って惹かれるのだけども、エルは戦死。
エルチは「でも、でも、エルが、あああー。エル・コンドルが」とジロンの胸にすがって泣く。
ジロンは「泣いて気が済むなら、どっさり泣くんだな、エルチ。ほら、エルチ。エルが飛んでるよ」と、空を飛ぶコンドルを示して慰める。
ここぞという時に、こんなセリフが出てくるジロンは、すごい。
そばで、やり取りを聞いていたラグは「やってらんないよ」と不機嫌。
そして、今度は、ラグが仲間たちの元を飛び出す。
ラグを探し出して迎えに来たジロンとのやり取りを以下に抜粋してみる。
ジロン
機嫌直せよ。ラグに出ていかれると困るんだよ。
ラグ
ウソ!エルチがいればいいんでしょ。
ジロン
おい、ラグ。ヤキモチ焼くなんて、ラグらしくないぞ。わかるけどさ。
ラグ
馬鹿!うぬぼれないでよ。
(以上、抜粋)
家出事件は、ラグにとって、イメージチェンジを図る好機でもあったと思うけど、そうしなかったのが、もったいない。
ラグは家出中、不器用で誠実な男性アコンと出会い、癒やされるけど、アコンは戦死。
ここで、ラグは「でも、でも、アコンが、あああー」とジロンの胸にすがって泣く手もあったと思うけど、そうしない。
バツが悪くて、すぐに仲間の元に帰らず、しばらく敵対行動を取ってしまう(このあたりの経緯は「ザブングルグラフィティ」では割愛)。
最終的に仲間の元に帰るのだけども、ジロンは泣きながらラグを殴って許す。エルチに対するのとは全く違う手荒な態度だ(「ザブングルグラフィティ」では割愛)。
その後、エルチは敵にさらわれ、洗脳されて、ジロンたちの敵となって向かってくる。
なかなか、悲しい運命。
その悲劇性も相まって、ジロンの心は、ますますエルチに向かう。
エルチはやがて、救出され、洗脳も解けて仲間に戻るのだけども、ジロンは、殴ったりはしない。「エルチ!元に戻ったのか」と笑顔で迎える。
最終決戦では、エルチは失明する。
そして、「このままでは、みんなに迷惑をかけてしまう」と考えて、行方をくらます。
きっと、ジロンが追いかけてくるだろうという期待も、あったに違いない。
ラグは、「まんまとしてやられた」と思ったことだろう。
期待通り、ジロンは、エルチを探しに行く。
「傷ついた仲間を連れ戻しに行く」という行動だから、ラグにジロンを引き留められるわけがない。
ラグは、静かに涙を流す。
「ジロン、馬鹿」と、つぶやいて。
これは、せつない。
ジロンはエルチを発見。
2人のやり取りを以下に抜粋してみる。
ジロン
見えないままで、1人で暮らすなんて無理だよ。
おれだって、エルチの手足と目の代わりくらいできるぜ。
エルチ
わたし、みんなに迷惑かけた。
ジロン
おまえはおれが嫌いか?
エルチ
嫌いなわけないでしょ。
ジロン
アイアンギアやサンドラットの連中は?
エルチ
嫌いなわけないじゃない。
ジロン
じゃ、決まりだ。戻るぞ。
(以上、抜粋)
ここぞという時に、こんなセリフが出せるジロンは、やはり、すごい。
ちなみに、このやり取りの後に、テレビ版では「ラグがかわいそうよ」「ラグは強い子だ」という、やり取りがある。
ジロンはエルチを抱き上げ、2人はキスを交わす。
そして、仲間たちの元へ。
ジロンを迎えたラグが、抱きついてキスするのだけども、これは、せつない。
ラグにとって、お別れのキスだ。
物語は、こうして、幕を閉じる。
その後、ラグは、ジロンたちの元を離れて、新たな人生を歩むのだろう。
テレビゲーム「ドラゴンクエストV」が思い浮かぶ。
このゲームには、花嫁選びイベントがあり、幼なじみで姉御肌のビアンカ、控えめなお嬢さまのフローラのどちらかを選ぶことになる。
ビアンカを選んだ場合、フローラはその後、別の男性と幸せに暮らす。
フローラを選んだ場合、ビアンカはその後、独り身で、ひっそりと暮らす。
(以下の記事「源氏物語の時代」で、ビアンカ・フローラ問題にも言及)
仮に、ジロンがラグを選んでいた場合、エルチは、すぐに別の男性を惹きつけ、幸せに暮らすのだろう。
自然体で甘えられる、あの性格なら。
ラグは、強そうに見えるけども、繊細な心を秘めている。
ビアンカのように独り身で、ひっそりと暮らしたりはしないでも、心の傷はなかなか癒えないだろう。
それぞれの家出事件の時の姿を見比べても、そう感じる。
この意味でも、「ラグは強い子だ」というセリフは、どうかと思う。
<余談・ウォーカーマシン>
「戦闘メカ ザブングル」は、建設機械のような造形で、実在感が漂う「ウォーカーマシン」も大きな魅力。
ウォーカーマシンのプラモデルは、今でもヤフオク等で人気がある。
私が好きなウォーカーマシンは、ずんぐり体形のダッガータイプと、華奢な体形のカプリコタイプ。
第2次世界大戦中のドイツ軍戦車に使われたジャーマングレーやダークイエロー、米軍戦車のオリーブドラブといった色で塗って、機番や部隊マークのデカールを貼ると、それだけで、何だか、わくわくしてくる。
映画「スターウォーズ・帝国の逆襲」に出てくるAT-AT(スノーウォーカー)をイメージして、真っ白に塗ってみるのも面白い。

番組後半に登場した新型ウォーカーマシンのブラッカリィやドランタイプは当時、キット化されず、ファンをガッカリさせた。
のちに、ブラッカリィのプラモデルを付属品とする「超合金魂ザブングル」、ドランタイプのプラモデルを付属品とする「超合金魂ウォーカーギャリア」が発売された。
私は、どちらもヤフオクで入手。
プラモデルだけ手元に残して、本体である超合金はヤフオクで売り払った。
ブラッカリィとドランタイプは、塗装済み、半完成のプラモデル。
今のところ、組み立てる予定はなく、たまに眺めて楽しんでいる。


ついでに言うと、「戦闘メカ ザブングル」は、ジロンたち登場人物が使う銃器が、実在のものという点も、ミリタリーマニアとしては、うれしい(たとえば、ジロンの拳銃はブローニング・ハイパワー)。
ザブングル、ウォーカーギャリア、ブラッカリィといった、人間のような手のウォーカーマシンが使う武器も、実在の銃器だと、なお、良かった。
私が大好きな短機関銃MP40だと、最高。
漫画「新デビルマン」(永井豪)にMP40が登場した時は、おおっ、と思った。



