「ダイ・ハード4.0」
「Live Free Or Die Hard」
(ネタバレあり。見ていない方はご注意を)
派手なアクションのハラハラに、適度なユーモアで緩急が付き、心地よい。
ブルース・ウィリスが演じる主人公の刑事ジョン・マクレーンは相変わらず、すっとぼけて良い味を出している。
今回は、非力なハッカーの若者マシューとのコンビプレーが面白い。
マクレーンに守られっぱなしだったマシューが、マクレーンの娘ルーシーとともに敵に捕まると一変し、ルーシーを守ろうと、必死で敵に抵抗する姿が見どころ。
マシューとルーシーは互いに好意を抱き、マクレーンが「おまえら、そこまでにしとけよ」という感じで苦笑いするラストが爽やか。
映画「ダイ・ハード4.0」(2007年、米国)は、「ダイ・ハード」シリーズの第4作。
マクレーンがサイバーテロ組織と戦う。
ハッカーたちが次々と殺される事件が起き、マクレーンが、事件に関与している可能性のあるマシューの連行に向かうところから物語が始まる。
事件は・・・全米の交通、金融、通信、電気、ガス、水道のシステムを乗っ取るサイバーテロを計画し、それと知らないハッカーたちに準備を手伝わせた組織が、用済みとなったハッカーたちを殺していたのだった。マシューも組織に利用された1人だった。
マクレーンが来たおかげで殺されずに済んだマシューは、そのまま、マクレーンの捜査に付き合わされる羽目になる。
物語中盤まで、マシューは、マクレーンに助けられっぱなし。
送電システムの拠点施設では、マクレーンが、組織のボス、ガブリエルの恋人で、格闘技の達人の美女マイに蹴り飛ばされ、窓ガラスを破って階下まで転落してしまう。
組織の計画を止めようと、送電システムを操作していたマシューは、マイに右腕をひねり上げられ「元に戻して!」と一喝されると・・・
「ぼく、右利きなんだ。ほんとに。こっちを離してもらったほうがいい」と、あっさり、ギブアップ。
「あんた、こんなことして、アメリカがどうなるか、わかっているのか?」と、ためらいは見せるけども・・・
マイに「ええ。すぐ実行して」と強く命じられると、「あー、そうですか」と諦める。
そんな感じのヘタレぶりだった。
この後、飛び込んでくるマクレーンのタフさと比べてみるといい。
マクレーンは、車で飛び込んできて、マイを巻き込み、エレベーターシャフト(エレベーターの昇降路)で宙づりになる。
不利な体勢のマクレーンは「ちょっとだけ、話し合おうや」と軽口をたたき、マイを挑発。
隙を突いて形勢逆転すると、「笑えよ。かわいこちゃん」と言いながら、強烈なパンチを顔面にたたき込む。
相手が女性でも、悪人なら容赦なしだ。
エレベーターシャフトの上から、マイの仲間が撃ってくるけども、ここはマシューが好プレー。背後から鉄パイプで殴って、たたき落とす。
マクレーンはワイヤーをつたって、はい上がり、マイは車ごと転落して爆死。
この後、ガブリエルがマイの携帯に「マイ、どうなってる?」と電話してくるのだけども・・・
電話を受けたマクレーンは、ねっとりと挑発する。
「マイちゃん。あー、あの子か。人を蹴るのが好きなアジア人だろ。あの子なら、この先ずっと、誰ともお話できそうにない。だって、車と仲良くエレベーターシャフトを落っこちていったからな」と。
激怒したガブリエルが、施設を爆破させるけど、マクレーンとマシューは脱出。
マシューがファインプレーを見せるのは、終盤。
物語が進むにつれ、サイバーテロ組織の目的は、さまざまなシステムを支配して、誰もネットを使えなくなった隙に、全米の金融データを盗んで儲けることだと、わかる。
戦いの焦点は、金融データが集積されている施設に移る。
ここで、マシューは金融データを暗号化して、テロ組織が取り出せないようにしてしまう。
組織の一員に見つかるけど、「殺したら元に戻せないぞ」と言って、殺されずに捕まる。
組織にしてみれば、暗号化を解除させるまで、マシューを殺せなくなった。
ハッカーらしい反撃だ。
この切り札が最後まで効いてくる。
ヘタレぶりは変わっていないから、先に捕まって人質になっていたルーシーと対面しても、「あいつらの神経、逆なでるの、よくないよ。だって、銃とか持ってるんだ」と、弱腰の態度を見せてしまう。
父に似て、気の強いルーシーは「あんた、それでもタマついてるの?助かりたいなら、もっと根性見せてよね」と、軽蔑。
ルーシーに馬鹿にされて何か感じたのか。
ここから、マシューは非暴力不服従のいわば「ガンジー作戦」を取る。
非力なマシューにとっては、必死の抵抗だ。
組織のボス、ガブリエルに、データを元に戻すよう脅されても、「やだよ。元に戻したら殺されるに決まってる」と拒絶。
殴られても、銃を突きつけられても、我慢。
組織のアジトに連れて行かれても、抵抗し続ける。
再び、暗号化を解くように言われても、「ねえ、ルールが変わってないよ。解除した瞬間に殺される」と反論。
怒ったガブリエルに、太ももを撃ち抜かれるけども、我慢。
ルーシーは、見ていられなくなり、「やめてー!」と叫んで、ガブリエルに飛びつく。
この時点で、胆力の勝負なら、マシューが勝っていた。
手を焼いたガブリエルは、ついに、卑劣な手段に出る。
ルーシーに銃を突きつけて「10秒で女を撃つ」と、マシューを脅す。
ルーシーは、泣きそうな顔。
驚くのは、ここから。
この状況で、マシューはさらに抵抗する。
いったんは「わかった。待って」と言うけども、「・・・できない」と拒絶するのだ。
悪事に加担できないという純粋な正義感もあっただろうけども・・・
ガブリエルがルーシーを撃つと言うのは、ハッタリで、マクレーンとの対決に備えて重要な切り札になるルーシーを撃つわけないと、もしかしたら、読み切っていたのか?と想像が膨らむ。
この後、マクレーンが飛び込んできて、乱闘。
最終的に、マクレーンは、ガブリエルに背後から羽交い締めみたいに押さえられ、肩口に銃口を突きつけられたところで、その銃の引き金を引き、自らの肩を貫通させて、背後のガブリエルを撃つという奇策で逆転。
この機を逃さず、マシューが、落ちている銃を拾って、ルーシーを押さえている組織の手下を撃ち殺すという連係プレーを見せる。
これで、敵は全滅。
マクレーンの奇策はもちろん、マシューの機敏で的確すぎる射撃も、「できすぎ」感が拭えないけども・・・まあ、視聴者としては、ホッとする結末だ。
物語の締めくくり。
マクレーンとマシュー、そして、マクレーンとルーシーの会話を以下に抜粋してみる。
マクレーン「よう。撃たれた気分は?」
マシュー「いい気持ちだよ。注射で。モルヒネ」
マクレーン「わお、ボーイスカウトのバッジもらえる」
マシュー「何それ、意味わかんない」
マクレーン「おまけに女は傷に興奮する」
(マシュー、ルーシーを見る)
マクレーン「ありゃダメだ。妄想だ」
マシュー「そこまでわかるの?ルーシー、何か言ってなかった?あの子とは良い感じだった」
マクレーン「妄想だ」
ルーシー「あの人、私のこと、何か言ってた?」
マクレーン「おいおい、ルーシー」
ルーシー「何が。聴いただけでしょ」
(以上、抜粋)
マクレーンのやれやれという苦笑いでエンドロール。
ぼく、かっこよかったよね、絶対、ルーシーの気を惹いたよね、と自覚していて隠さないマシューの態度が可愛い。
マクレーンは、ルーシーとくっつかないように話をはぐらかしておきながら、別れ際には「男になったな」と声をかけるのもいい。
不死身の男マクレーンと非力な若者マシューとの組み合わせが、つくづく良かった。
この作品が面白かったから、続編の「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(2013年、米国)も見た。
こちらは、マクレーンと息子でスパイのジャックとのコンビプレー。
カーチェイスやアクションは「ダイ・ハード4.0」よりド派手だし、ストーリーはどんでん返しの連続で、スリリング。
ただ、ラストは、悪党ぶち殺しておわり、という感じだから、余韻は乏しい。
そう考えると、「ダイ・ハード4.0」のほのぼの感、爽やかさは捨てがたい味わいがある。

