コクトーツインズ「トレジャー」
Cocteau Twins 「Treasure」
世界一の美声の歌手は誰か。
英国のドリームポップバンド、コクトーツインズのエリザベス・フレイザーは有力候補の1人だろう。
ささやくような裏声は「天使の歌声」と呼ばれ、地声の歌と多重録音して引き立て、神秘性を醸し出す。
QNTALのシグリッド・ハウゼン、ステラマラのソーニャ・ドラクリッチといった美声ボーカルを探していて、知った。初めて聴いた時は衝撃を受け、すぐさま気に入った。
ハイトーンの凄い美声という点では、アルゼンチンのフォルクローレ・デュオ「クリスティーナとウーゴ」のクリスティーナが世界屈指だと思うが(声を転がすような「コロラトゥーラ」という歌唱法を使う。これが凄まじい)、エリザベスにも同じくらい感動した。
コクトーツインズの1984年のアルバム「トレジャー」は、とりわけ神々しい。
何を言っているのか、そもそも英語なのかさえ、はっきりしない歌い方も持ち味。
収録曲「ローレライ」は、エコーをかけてループするギターの音色も相まって、浮遊感が漂う。後半の♪ダウンダ、ダウンダ、ダウンダ…という歌詞が頭に染み込む。
「アロイシウス」は、♪ハアアアアー…という裏声に昇天させられそうだ。飛行機が飛び立つような効果音(?)も入っていて、面白い。
「パンドラ」は、早口の地声と、ふわーっとした裏声のコーアスが合わさって、不思議な曲だ。♪ファンニャー、ファンニャー…という裏声がいい。
神秘性は少ないものの、エリザベスの歌唱力がさえるアルバムは、1988年の「ブルーベル・ノール」だと思う。これは、またの機会に書いてみたい。