ナイン・インチ・ネイルズ「ザ・ダウンワード・スパイラル」
Nine Inch Nails 「The Downward Spiral」
1990年代に隆盛を迎えたインダストリアル・ロックは、サンプリング+ドラムの打ち込み+メタルのギター+叫び声という感じのダークな音楽だ。
2大バンドのひとつ、ナイン・インチ・ネイルズは、ただ騒々しいだけでなく、動と静のメリハリの付け方がうまくて深みがあり、今なお引きつけられる。プリンスやピンクフロイドにも影響を受けたといい、音作りへのこだわりが似ているかもしれない。
当時、フリージャズやノイズに興味を持ち、インダストリアル・ロックを知った。ナイン・インチ・ネイルズには、騒音感が強いミニストリーとは趣が違い、プログレ風のメタルという印象を抱いた。
94年の傑作アルバム「ザ・ダウンワード・スパイラル」の収録曲では「ルイナー」がお気に入り。
イントロの電子音は80年代の米国テレビドラマ「ナイトライダー」のオープニングを思い出させる。サビの部分はホーンセクション風のシンセサイザーで、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第4楽章を思わせる荘厳さ。
後半、パタッと静かになったかと思うと、フロイド風の泣きのギターが入る。往年のロックへのオマージュとしてフロイドの曲「コンフォタブリー・ナム」をイメージして弾いたらしい。
そう考えると、イントロの雰囲気は、フロイドの曲「ラン・ライク・ヘル」に似ている気もする。
同じアルバムの収録曲「ハラシー」は、電子音のイントロに続いて、♪ダガッダーン、ダガッダーン…というドラムと、ささやくような歌声が加わる。この歌声がプリンスっぽい。ギターリフのループも印象的だ。
ナイン・インチ・ネイルズの曲で一番好きな「ハピネス・イン・スレイバリー(リミックス)」(アルバム「フィクスト」収録分)については、あらためて書きたい。