スティーリー・ダン「幻想の摩天楼」
Steely Dan 「The Royal Scam」
スティーリー・ダンは、ドナルド・フェイゲン(キーボード、ボーカル)とウォルター・ベッカー(ベース)が多数のミュージシャンを雇って厳選した演奏で曲を作るユニットとして知られる。
初期のバンド形態は途中で崩壊し、曲はジャズ・フュージョン色を強めていった。
個人的には、過渡期のアルバム「幻想の摩天楼」(1976年)が一番好きだ。
だんだんと洗練されつつも、初期の泥臭さが残るのがいい。フェイゲンの癖のあるハスキーボイスとも合っていると思う。
収録曲「アルタミラの洞窟の警告」は、映画のようなドラマチックなイントロがいい。何となく、アニメ「ルパン三世」を思い浮かべてしまう。キーボードの音色が美しく、サックスのソロが情感を高める。
「滅びゆく英雄(キッド・シャールメイン)」は、緊迫感のあるイントロで始まり、クラヴィネットの音色がファンク感を醸し出す。ラリー・カールトンのギターソロが聴きどころ。
ほかにも、ファンキーなメロディーが癖になる「トルコ帽もないのに」、何と言っていいのか不思議な雰囲気の曲「緑のイヤリング」、レゲエ風の「ハイチ式離婚」など、バラエティー豊か。
地味ながら、バーナード・パーディーのドラムも、いい味を出している。
何より、全体を引き締めるのは、フェイゲンのボーカル。
フェイゲン自身は、自分の歌声が嫌いらしい。でも、相棒のベッカーに褒められ、ボーカルを務めてきたのだと何かで読んだことがある。
以前、大黒摩季のライブに行った時、曲の合間のMCで、下積み時代の米国武者修行に触れていて、ハスキーボイスを褒められ、例えられたという歌手3人にフェイゲンが入っていた(ほか2人はスティングとマライア・キャリー)。
大黒摩季の口からフェイゲンの名前が出るとは意外だったが、フェイゲンの歌もスティーリー・ダンの魅力なのだと、あらためて感じた。