チック・コリア「スペイン」
Chick Corea 「Spain」
ジャズピアノ奏者チック・コリアは、スペイン音楽に傾倒し、曲に取り入れた。
代表曲「スペイン」しかり。フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアにささげた「イエロー・ニンバス」「フラメンコ」しかり。「僕の心の故郷はスペインだ」と語っていたといい、スペイン愛あふれるアルバム「マイ・スパニッシュ・ハート」も、よく知られる。
「スペイン」は、チックが率いるフュージョンバンド、リターン・トゥ・フォーエバーの1973年のアルバム「ライト・アズ・ア・フェザー」に収録。
スペインの作曲家ロドリーゴのアランフェス協奏曲の哀愁漂うメロディーでゆったりと始まり、フラメンコ風の速いリズムになる。エレクトリックピアノのコロコロした演奏が美しい。「アアア、アアア、アアー」「パッパ、ラバラ、ラバーララー」といったフローラ・プリムの歌声もいい。
10分近い曲だが、1998年発売のアルバム完全盤に5分半と短い別テイクがあり、これがお勧めだ。エキスがぎゅっと詰まっている。
ピアノ、ベース、ドラムのアコースティック・バンドの演奏も、89年のアルバム「スタンダーズ・アンド・モア」にあるが、そんなに好きじゃない。アランフェス協奏曲や歌声がないからだろうか。
私は、最初に聴いた「スペイン」が、このアコースティック・バンドのものだったので、こんなにいい曲だとは、しばらく気づかなかった。
声を楽器のように使うジャズ歌手ボビー・マクファーリンとの共演も面白い。連名のアルバム「スペイン」(1990年)に収録。イントロのピアノ連打に続き、ボビーがアランフェス協奏曲を演じる。これがいい。
チックは参加していないが、、、パコとジョン・マクラフリンによるギター2重奏でのカバーも挙げておきたい。2人連名のライブ盤「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」(CD化は2018年)に収録。
あの、これ見よがしなマクラフリンが出しゃばらず、パコと互いに相手を引き立て、掛け合い、気持ちよく弾いている。仲がいいんだねというのが感じられて、面白い。