ハービー・ハンコック「ロックイット」
Herbie Hancock 「Rockit」
ジャズピアノ奏者ハービー・ハンコックは、電化ジャズ路線を走っていた頃の曲が味わい深い。
例えば「ロックイット」(1983年のアルバム「フューチャー・ショック」に収録)。レコードをキュッキュッと言わすDJのスクラッチを効果音に取り入れ、斬新な曲だった。ハービーのドヤ顔が浮かんでくるようだ。
しつこいまでのキュッキュッ音に、ハービーのすかしたシンセサイザー、キューバの太鼓バタドラムの軽快でコミカルな音、機械の声のようにエフェクトをかけたヴォコーダーボイスが加わる。
今聴くと、古臭く、チープな感じがしなくもないが、そこも含めて味がある。バラエティー番組「踊る!さんま御殿!!」の視聴者体験談コーナーで流れ、今も聴く者の心をとらえる。
(バタドラムで参加したキューバ出身のパーカッション奏者ダニエル・ポンセについては、またの機会に書く)。
ハービーは、ヴォコーダーボイスをいち早く取り入れた。「アイ・ソート・イット・ワズ・ユー」(1978年のアルバム「サンライト」に収録)という曲は、自ら声にエフェクトをかけて歌いまくる怪作。チャレンジ精神旺盛だ。
歌が下手だと言われたのか、やりすぎだと気づいたか。「ロックイット」では控えめな使用にとどめ、もちろん、自分では歌っていない。
余談だが、、、図に乗りやすいのがハービーの特徴であり、その最たる例が2010年のアルバム「イマジン・プロジェクト」。「地球の平和」をテーマに、あの名曲「イマジン」を世界のミュージシャンを集めてカバーしてみました、という作品。
なんか、昔、似たような企画があったような、、、「ウィー・アー・ザ・ワールド」かい! お前は、クインシー・ジョーンズになったつもりか~!と言いたくなる迷作。
参加者の目玉はジェフ・ベック。オジー・オズボーンのアルバムにも参加するし、ベック、腰が軽い。それで、肝心のカバー作品は、文字通り、みんなでカバーしてみましたというだけのもの。元の曲が良いから、とりあえず聴けるという。
うっかり、このCD、買ってしまった。
「イマジン」以外の曲も入っており、収録曲「ソング・ゴーズ・オン」が良いのが救いだ。ハービーの長年のお友達のサックス奏者ウェイン・ショーターと、若手の注目株だったシタール(インドの弦楽器)奏者アヌーシュカ・シャンカールが好演している。
とりあえず、この曲があって、よかった。