プリンス「KISS」
Prince 「KISS」
人気歌手プリンスは一見、何だか気持ち悪い。
裏声も、ルックスも、やたら肌をさらすところも。
それが聴くうちに、かっこよく思えてくる。プリンスになりたいと思うほどに。
一番好きな曲「KISS」(1986年のアルバム「パレード」に収録)は、ねっとりとしたチュパチュパ音が最高だ。
そして、ファンキーなギターが聴きどころ(プリンスが演奏)。中盤のギターソロもかっこいい。
伴奏がシンプルで、プリンスの甲高い裏声がよく味わえるのも、いい。「アッ」といったあえぎ声(?)、「ホゥッ!」といった奇声もいい。
このアルバム、ほかの収録曲は聴かないが、「KISS」だけで十分に価値がある。
音楽ユニット、アート・オブ・ノイズがカバーしたが(トム・ジョーンズが歌う)、サラッとしていて、原曲のインパクトは全くない。まるで別の曲だ。
やはり、あのねちっこさは、プリンスならでは、か。
友人の勧めで「パープル・レイン」(1984年の同名アルバムに収録)を聴いたのが最初。
9分近い長い曲なのに、歌はほぼ前半だけというのが大胆だ。
後半はギターと「フー、フーフーフーフー…」といった声で延々と聴かせ、余韻がものすごい。あー、終わったかなと思ったところから、まだ2分くらい続く。
このしつこさも、プリンスならでは、だろう。
同じアルバムの収録曲「ビートに抱かれて」は、伴奏がシンプルで、歌がじっくりと味わえる。
それにしても、原題「When Doves Cry」(=鳩が鳴く時)が、なぜ、「ビートに抱かれて」なのか。邦訳した人のセンスというか、想像力がものすごいと思う。
プリンスは、多くのミュージシャンに影響を与え、自らもさまざまな音楽を取り込んだ。
例えば「ソー・ブルー」という曲(1978年のアルバム「フォー・ユー」に収録)は、尊敬する歌手ジョニ・ミッチェルへのオマージュだという。
確かに、ジョニの曲に似た雰囲気。プリンス感は、あまりない。
ジョニは一時期、ベース奏者ジャコ・パストリアスとよく共演していた。
そのせいか、この曲にはジャコの名曲「コンティニューム」に似たベースのメロディーがあり、興味深い。
ドリームポップバンド、コクトーツインズの幻想的な音楽にも注目した。
「ティク・タク・トゥー」という曲は、触発されて作ったらしい。
コクトーツインズの曲「フィフティ・フィフティ・クラウン」のイントロを取り込んだ曲「ラブ・ザイ・ウィル・ビー・ダン」もある(マルティカに提供)。
とても個性的で人気者なのに、飽き足らない。
プリンスは孤高の求道者というべきか。