パキート・デリベラ「ブロウイン」
Paquito D'Rivera 「Blowin'」
キューバ出身のサックス奏者パキート・デリベラは、温かい音色と流れるような演奏が持ち味だ。
母国の人気バンド「イラケレ」では、ピアノ奏者チューチョ・バルデス、トランペット奏者アルトゥーロ・サンドヴァルとともに、看板プレーヤーだった。
米国亡命後の1981年に放ったアルバム「ブロウイン」が素晴らしい。おそらく、デリベラの最高傑作だ。
収録曲「ワルツ・フォー・モエ」がお気に入り。
イントロのピアノやパーカッションに続いて吹き始めるフレーズからして、かっこいい。初めて聴いて、すぐに気に入った。
パーカッションを演奏するのは、同郷のダニエル・ポンセ。硬い音から察すると、キューバの太鼓ボンゴだろうか。
前半はデリベラが吹きまくる。後半はピアノとベース、それぞれのソロがある。これもいい。
終盤は、デリベラの速吹きと、ポンセの高速連打で盛り上げる。
収録曲「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」もいい。
帝王マイルス・デイビス(トランペット奏者)の演奏で知られるジャズの定番曲を、アップテンポで演じる。
4分ほど演じた後、ポンセのソロが1分くらいある。ポンセはキューバの太鼓コンガを演奏。
ほかの奏者は休むので、ポンセの演奏がじっくりと楽しめる。これがいいアクセントになって、デリベラの速吹きをより引き立てている。
私が、デリベラの演奏を初めて聴いたのは、ポンセが演じる「シボネイ」(ポンセの1983年のアルバム「ニューヨーク・ナウ」に収録)で、だった。
子どもの頃、ラテン音楽好きの父が「中南米の旅」というラジオ番組からカセットテープに取っていて、よく聴かされた。
「シボネイ」は、ラテンの定番曲。メキシコのギター3人組トリオ・ロス・パンチョスの哀愁漂う演奏がなじみ深いだろう。
ところが、ポンセの「シボネイ」は、ラテンパーカッションを前面に出し、♪ドン、チンチン、ドン、チンチン…と、まるでチンドン屋(たぶん、キューバの太鼓ティンバレス)。
ここに、メリハリを付け、縦横無尽に吹きまくるデリベラのサックスが加わり、不思議な味わいを醸し出す。あえぐような吹き方もあり、面白い。
それまで、パンチョスの「シボネイ」に親しんでいたので、こんな演奏もあるのかと衝撃的だった。
デリベラは、ポンセの1987年のアルバム「アラウェ」にも参加。
タイトル曲の終盤で、かつての「シボネイ」を思わせるような演奏を披露している。
個人的には、デリベラとポンセの共演をもっと聴きたかった。
<CD購入メモ>
ダニエル・ポンセの「ニューヨーク・ナウ」は名盤。Amazonでは現在(2025年3月1日)、品切れのようで、商品の紹介ができない。そんなに珍しい品ではないので、タイミングを待てば、出品されると思う。
同じくポンセの「アラウェ」も、Amazonでは現在、CDは品切れのようだ。レコードがあったので、とりあえず、商品紹介を載せておく。これも、そんなに珍しい品ではないので、タイミングを待てば、出品されると思う。