エニグマ「サッドネス(永遠の謎)」
Enigma 「MCMXC a.D.」
ドイツを拠点とする音楽ユニット、エニグマは、グレゴリオ聖歌や民族音楽と、エレクトロビートを掛け合わせたヒーリングミュージックの先駆けだ。
1990年のアルバム「サッドネス(永遠の謎)」が傑作で、収録曲「プリンシプルズ・オブ・ラスト」が圧倒的に素晴らしい。
「プリンシプルズ・オブ・ラスト」は、アルバムに先行して発表されてヒットしたシングル曲「サッドネス」を取り込み、12分近い曲に仕立ててある。
重低音のドラムのビートに続き、厳かなグレゴリオ聖歌が加わり、シンセサイザーが浮遊感のある音や星が流れるような音を奏でて神秘的。
女性ボーカルのサンドラ・クレトゥがささやく声や「ハァハァ…」とあえぐ声も入る。
神聖な宗教音楽とセクシーなあえぎ声を組み合わせ、「聖」と「性」のギャップで背徳的な魅力を生んだ発想が秀逸だ。
ささやき声は「サド、教えて」「サド、ちょうだい」といった内容。
サドとは、サディズムの語源になったフランスの作家マルキ・ド・サドのことかと思う。
収録曲「ミア・カルパ」も、グレゴリオ聖歌とサンドラのささやき声、あえぎ声という組み合わせは同じ。
雨の音と教会の鐘の音で静かに始まり、小刻みなビートが加わってアップテンポになる。
「プリンシプルズ・オブ・ラスト」とは、ひと味違い、これも、かっこいい。
収録曲「バック・トゥ・ザ・リバーズ・オブ・ビリーフ」は、静かなエレクトロビートや、かすかな歌声で延々と引っ張り、中盤はビートがややアップテンポに。
うなり声みたいなものも入る。
最後に、解き放たれ、天に昇るような飛翔感がよく、爽快感だ。
このアルバムの収録曲は粒ぞろい。夜、寝る時に通して聴き、癒やされたい。