ステラマラ「セブン・ヴァレーズ」
Stellamara 「The Seven Valleys」
ステラマラは、東欧や中東の音楽を現代風にアレンジして聴かせるバンド。
歌手のソーニャ・ドラクリッチは、東欧系の米国人で、両親はセルビアとハンガリーの出身だとか。ブルガリアの歌唱法「ブルガリアンボイス」や中東の歌唱法を駆使する。
2004年のアルバム「セブン・ヴァレーズ」がおすすめだ。
収録曲「Baraka」は、トルコのイスラム神秘主義音楽「スーフィー音楽」風のエキゾチックな曲。
トルコの弦楽器ジュンブシュの哀愁漂うメロディーに、東欧のロマ民族(ジプシー)の手拍子が絡み、フラメンコをも想起させる。歌詞はなく、ソーニャは「ウンダー、アーアー」といった声で聴かせ、神秘的だ。
フラメンコは、インドから流浪してきたロマ民族の音楽とイスラム文化の音楽がスペイン南部のアンダルシア地方で出合い、融合して生まれたと考えられている。
「Baraka」のように、ロマ民族の音楽とイスラム文化の音楽の融合は、相性がいいはずだ。
アルバム「セブン・ヴァレーズ」の収録曲「Szerelem」はハンガリーの伝統音楽をアレンジした明るく爽やかな曲で、収録曲「Kyrie Eleison」は東欧の聖歌をアレンジした荘厳な曲。
どちらも、ソーニャの美声がよく味わえる。
ソーニャの歌唱力の神髄に触れるなら、2009年のアルバム「ゴールデン・スレッド」の収録曲「Prituri Se Planinata」がいい。
ブルガリアの民謡で、もの悲しいメロディーの曲。ソーニャは、こぶしの効いた節回しなど、ブルガリアンボイスの歌唱法を見せる。
ニット・グリットによるリミックス版もシングル盤で出ているようだ(私は、iTunesで買った)。
こちらは、電子音のビートをふんだんに盛り込み、サンプリングしたソーニャの歌をちりばめている。
これはこれで好きだが、ソーニャの歌を味わうなら、オリジナルがいい。
「ブルガリアンボイスの神秘」(Le Mystere Des Voix Bulgares)というCDに収録されている「Prituri Se Planinata」も紹介しておこう。
1975年発売で、レーベルは英国の4AD。コクトーツインズやデッド・カン・ダンスを売り出した個性的なレーベルだ。
あと、「Pilentse Pee」という曲も。