ダニエル・ポンセ「ニューヨーク・ナウ!」
Daniel Ponce 「New York Now !」
♪ポッポッポッコ、チチンカンカン、チチンカン…と太鼓とかねの掛け合いが鳥取県の伝統芸能・因幡の麒麟獅子舞のはやしを思わせ、引き込まれた。
キューバ出身のパーカッション奏者ダニエル・ポンセの代表曲「オディエ」は素朴な打楽器が郷愁を誘う。
1983年のアルバム「ニューヨーク・ナウ!」の収録曲。
ポンセが奏でるのは、手でたたくキューバの太鼓コンガだ。かねはラテン音楽でよく使うカウベル。
イントロに続き、クラベスという拍子木が、♪カカンカカン、カンカンカン…とリズムを刻み始め、コンガ連打が速さを増す。
「オディエー……アエーエー……」と断続的なコーラスも相まって、頭に染み込む。
同郷のサックス奏者パキート・デリベラと共演した収録曲「シボネイ」も名演だ(デリベラの記事で書いた通り)。
ポンセは、デリベラのアルバム「ブロウイン」、ピアノ奏者ハービー・ハンコックのヒット曲「ロックイット」にも参加し、好演を見せた。
自ら放ったアルバムは3枚しかないが、カラーが違い、多芸さを感じさせる。
職人肌のパーカッション奏者で、どの方向を目指しても面白かった。
「ニューヨーク・ナウ!」でキューバ音楽を前面に出したかと思えば、1987年の「アラウェ」は同郷の歌手グロリア・エステファンのようなラテンポップの趣。
客演の女性歌手D・K・ダイソンがはじける収録曲「パチャンガ」が特にそうだ(YouTube動画は見つけられなかった)。
1991年の「チャンゴ・テ・ジャマ」はジャズ色が強い。
カンカンカンカン…と打楽器が刻むリズムが木魚のようで、癖になる。
収録曲「マス・ブルース」がいい。
前衛ジャズも、きっちりとこなす。
バイオリン奏者アルフレード・トリフの2009年のアルバム「ダダソン」に参加して「ダダイズムを注入したキューバ音楽」を演じる。
マラカスに似た楽器シェケレ、刻み目を入れたひょうたんを棒でこする楽器グィロを含め各種パーカッションを駆使しており、ポンセの演奏がよく味わえるという点でも外せない重要アルバムだ。
バイオリンとの取り合わせが奇妙な味わいを醸し出す。
個人的にはオリジナルアルバム「アラウェ」「チャンゴ・テ・ジャマ」より、このアルバムが好き。
収録曲「ダダソン」「ラ・バルサ・ド・デュシャン」「バイレ・デル・スアビト」「マンボソン」が特にいい。
「ダダソン」は、残念ながら、一般ウケする音楽ではない。
先日も、女子会(飲み会)に出た妻を迎えに行き、妻の友人も乗せてご自宅までお送りしたのだが、車中で「ダダソン」をかけていたら、妻の友人に「この音楽は歌がないの?」と、暗に歌のある音楽に変えるよう促された。
サルサの女王セリア・クルスの曲に変えたら、とりあえず、不満は出なかった。
<CD購入メモ>
「ニューヨーク・ナウ!」は名盤。Amazonでは現在(2025年3月17日現在)、品切れのようで、商品の紹介ができない。そんなに珍しい品ではないので、タイミングを待てば、出品されると思う。
「アラウェ」は現在、ぼったくり価格の出品しかない。これも、そんなに珍しい品ではないので、タイミングを待てば、適正価格で出品されると思う。
「ダダソン」は、私もCDを持っていない。iTunesで買って聴いている。
「ニューヨーク・ナウ!」「ダダソン」の収録曲のいくつかはiTunesの商品も紹介しておく。「アラウェ」収録の「パチャンガ」はiTunesにもなかった。