デレク・アンド・ザ・ドミノス「いとしのレイラ」
Derek & The Dominos 「Layla」
私は洋楽の歌を聴く時に、歌詞の意味は考えないほうだ。歌声は音として楽しむ。
例外的な歌がいくつかあり、そのひとつがロックバンド、デレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」(1970年の同名アルバムに収録)。
これは、エリック・クラプトンのギターの音色も、歌声も、そして歌詞も、胸に迫る。
クラプトンが親友ジョージ・ハリスン(ビートルズ)の妻パティに恋してしまい、その苦悩を表した歌。
私が収録アルバムを買ったのは高校年代の頃。当時、失恋を引きずっていたから、がっちりと心をつかまれた。
Layla, you’ve got me on my knees
(レイラ、お前にひざまずかずにいられない)
Layla, I’m begging, darling please
(レイラ、愛しい人よ、お願いだ)
Layla, darling won’t you ease my worried mind
(レイラ、この悩ましい気持ちを鎮めてくれ)
、、、というサビの部分は、実感がこもった歌声に、共感して、涙が出そうになる。
Like a fool, I fell in love with you
(馬鹿みたいに、お前に恋してしまって)
Turned my whole world upside down
(俺の世界は、すべて変わってしまったんだ)
、、、という歌詞もいい。恋愛って、そうだよねと思う。
ギター演奏もいい。
♪チャララララララー…というフレーズは、ロック史に残る素晴らしさ。
あのフレーズに、この歌が凝縮されている。
前半が歌で、後半はピアノの叙情的な演奏という構成も秀逸だ。
おかげで、7分余りの長さになったが、この余韻があってこそ、せつなさが増す。
むせび泣くデュアン・オールマンのギターも、これまた名演。
さらに言うと、アルバムのジャケットもいい。
クラプトンが、パティを思わせる女性の絵画を採用したのだとか。
この熱の入れようだ。
この歌を聴くと、クラプトンは、やっぱり、ギターを弾く「歌手」なのだなと思う。
のちに、クラプトンはこの名曲をアコースティックギターで演奏するようになったけど、別の曲かと思うくらい雰囲気が違う。
私は、アコースティック版「いとしのレイラ」は、あまり好きではない。
私が大好きなサックス奏者デビッド・サンボーンがクラプトンと共演して「いとしのレイラ」を演奏している。
ベース奏者マーカス・ミラーらも加わった1997年のライブ。
残念ながら、これもアコースティック版だ。
ジャズのしっとり系の定番曲「イン・ア・センチメンタル・ムード」から始まるメドレーになっていて、マーカスはバスクラリネットを演奏。サンボーンが絡んでくる。
マーカスが「いとしのレイラ」のフレーズを吹いて、クラプトンが登場する辺りまではいいんだけどなあ・・・
クラプトンが歌った後のサンボーンのソロもいいんだけどなあ・・・
クラプトンとサンボーンの共演ということで言えば、サンボーンのアルバム「アップフロント」収録曲の「フルハウス」のほうがいい。
この曲の中盤で、クラプトンは短いながら、味のあるソロを見せている。
余談・サンボーンのロック
デビッド・サンボーンによるロックの名曲の演奏で、何と言っても素晴らしいのは「エンジェル」だ。これはおすすめ。
ジミ・ヘンドリックスの名作バラードで、ジャズ編曲者ギル・エバンスのアルバム「プレイズ・ジミ・ヘンドリックス」(1974年)に収録。
歌の代わりに、サンボーンのサックスが歌う。これが情感たっぷり。緩急が巧みで、しゃくり上げるような吹き方を交えるのも、面白い。
スティーリー・ダンの名曲「ペグ」のカバーも好きだ。
キーボード奏者マイク・マンデルのアルバム「スカイ・ミュージック」(1978年)に収録。もともと、大好きな曲なので、サンボーンが吹いているというだけで、うれしくなる。