コクトーツインズ「ブルーベル・ノール」
Cocteau Twins 「Blue Bell Knoll」
英国のドリームポップバンド、コクトーツインズは「天使の歌声」と称えられるエリザベス・フレイザーの美声が持ち味だ。
裏声と地声の歌を多重録音で組み合わせ、幻想的な音楽に仕上げる。
エリザベスの歌唱力がさえるアルバムは1988年の「ブルーベル・ノール」だろう。
エコーをかけ、ループするギターの音色と相まって、神々しい代表曲「ローレライ」が入った84年のアルバム「トレジャー」は、もちろん好きだ。
だが、歌をじっくりと味わうなら「ブルーベル・ノール」がお勧め。
歌唱法の鍛錬かと思わせるアルバムだ。
収録曲「キャロラインズ・フィンガー」は、郷愁を誘うメロディーに乗って歌う。
「ルリヒー…」とか「トゥルラー…」とか、裏声で巻き舌という荒技を見せる。
裏声と地声の組み合わせが程よく、深みがあって、美しい。
裏声で高まった後に「イエイ、ヘイヘイヘイ…」と降下していくところもいい。
コクトーツインズ屈指の名曲だ。
タイトル曲は、♪チャラララ、チャラララ…という、もの悲しいメロディーに乗せ、「ロホホホ…」といった美声を繰り出す。
「イッヒッヒッヒッ…」と声を震わせるような歌い方を交えるのが面白い。
終盤1分くらいのインスト部分もなかなか聴かせる。
収録曲「チコ・バフ」でも「ホホホ、ホホッ、ツァーツァー…」みたいに、リズミカルに声を震わせる。
収録曲「サックリング・ザ・メンダー」では、限界に挑むかのような高音を発する。
アイスランドのビョーク、日本の宇多田ヒカルといった各国の歌姫にも、エリザベスのファンがいるらしい。
熱心なのが中国のフェイ・ウォン(王菲)で、コクトーツインズの曲をカバーし、曲の提供も受けた。
例えば「ブルー・ビアード」(1993年のアルバム「フォー・カレンダー・カフェ」に収録)のカバーは、裏声のコーラスを含め、よく再現していて面白い。
(フェイ・ウォンの1994年のアルバム「夢遊(胡思乱想)」の収録曲「白昼夢(胡思乱想)」)。
でも、「キャロラインズ・フィンガー」「サックリング・ザ・メンダー」みたいな難曲は無理だろうと考えてしまうのは、エリザベスびいきか。