クリスティーナとウーゴ「コンドルは飛んでいく」「花祭り」
Cristina y Hugo 「El Condor Pasa」「El Humahuaqueno」
アルゼンチンのフォルクローレ・デュオ「クリスティーナとウーゴ」は夫婦で、妻のクリスティーナが凄いハイトーンの美声。
フォルクローレの定番曲「コンドルは飛んでいく」では、「ホハハハ、フフーフ、フフフフー…」と高い声を転がすように歌う。
クラシック音楽で「コロラトゥーラ」と呼ばれる歌唱法だ。
ちなみに、「コンドルは飛んでいく」は、前半の叙情詩と後半の舞曲で構成される。
1970年に米国のフォークデュオ、サイモン&ガーファンクルがカバーして広く知られる哀愁漂うメロディーは、叙情詩の部分だ。
なお、エクアドル出身のサンポーニャ奏者レオ・ロハスが現代風にアレンジした「コンドルは飛んでいく」も、叙情詩の部分だけだ。
サイモン&ガーファンクルは、欧州で活動したアルゼンチン人らのバンド、ロス・インカスの演奏でこの曲を知ったらしく、バックで民族楽器を奏でるのはロス・インカス。
このロス・インカス版「コンドルは飛んでいく」は伝統的な形式で、叙情詩の後に「ヒャー、ハッハー」みたいな掛け声が入って、アップテンポの舞曲に切り替わる。
叙情詩だけでも良い曲だが、舞曲と組み合わさると、フォルクローレ感が増す。
クリスティーナとウーゴ版「コンドルは飛んでいく」は同様に伝統的な形式で、クリスティーナは舞曲のところでコロラトゥーラを見せる。
クリスティーナは、フォルクローレの定番曲「花祭り」でも、凄いコロラトゥーラを聴かせる(普通に歌詞で歌った後、次はコロラトゥーラで歌う)。
初めて聴いた時、人間の声でなく、ケーナの音かと思ったほどだ。
締めくくりのよく伸びる美声もいい。
スタジオ録音より、ライブ演奏がアップテンポで圧倒的にいい。
1978年の東京でのライブが入ったCDを探して買った。
クリスティーナの肉声も入っていて「たくさん、手拍子」「もっと、もっと」と日本語で、観客に呼びかける。
元気いっぱいの「オラー!」(スペイン語の『こんにちは』)も聞ける。
「花祭り」は、歌のないロス・インカスの演奏も悪くないが、歌入りが圧倒的にいい。
子どもの頃、ラテン音楽好きの父が持っていたレコードで歌入りの「花祭り」を聴いて気に入った。
それは、クリスティーナとウーゴの演奏ではなかったと思うが(そのレコードはもうないので、誰だったかは確かめられない)、のちにクリスティーナとウーゴの「花祭り」を聴いた時は本当に懐かしくなったものだ。
クリスティーナの高音の凄さが味わえる曲「火の鳥」も挙げておきたい。
冒頭からハイトーン。よくこんな声が出るなと思う。
締めくくりには「ホハッハハ、ホハホホッホー…」といったコロラトゥーラ。
特に好きな曲というわけではないが、冒頭と締めくくりはとてもいい。
クリスティーナは間違いなく世界屈指の美声歌手だ。35歳の若さだった1986年に、ウーゴとともに交通事故で亡くなったことが惜しまれる。