カルロス・サンタナ「哀愁のヨーロッパ」
Carlos Santana 「Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)」
ラテンロックを開拓したギター奏者カルロス・サンタナは、泣きのギターの名手として知られ、つかみの良いイントロが持ち味だ。
私は、子どもの頃に名曲「哀愁のヨーロッパ」を父に聴かされ、冒頭のフレーズ一発で好きになった。
この5秒ほどに曲のエキスが濃縮されており、繰り返して聴きたくなる。
バンドのサンタナ名義の1976年のアルバム「アミーゴ」に収録され、邦題通り、哀愁漂う曲。終始、ギターがせつせつと響く。
スメタナの「モルダウ(ヴルタヴァ)」に匹敵する、せつなさだ。
途中、♪キューーーン…と伸びる泣きのギターもいい。
♪タタラタタラ…という中盤のフレーズもいい。
この曲は、スペインの人気歌手ジャンゴがカバーしている。フラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアの伴奏付きで。
パコは、中盤(2分55秒~3分40秒辺り)のソロ演奏で速弾きを見せる。
サンタナの演奏とは雰囲気が異なるが、これも、なかなか、かっこいい。
初期のラテンロックに回帰したアルバム「アミーゴ」は、パーカッションを前面に出した収録曲「ヒターノ」もいい。
ラテンポップバンド、マイアミ・サウンド・マシーンの音楽を思い出させるような曲だ。特にピアノとか。
サンタナは、アコースティックギターに持ち替え、スペイン風の演奏を見せる。
敬愛するパコにささげる演奏だろうか。
この曲を聴くと、「哀愁のヨーロッパ」でサンタナがイメージするヨーロッパとは、スペインではないかと思ってしまう。
ちなみに、「ヒターノ」とは、スペイン南部のロマ民族(ジプシー)のこと。
イントロが印象的と言えば「ブラック・マジック・ウーマン」は外せまい。
1970年のアルバム「天の守護神」に収録(同じくバンドのサンタナ名義)。
♪タラリラリタララ…というキーボードに、♪チャッチャッチャチャー…とギターが続くイントロはあまりにも有名だ。
ロックバンド、フリートウッド・マックの曲のカバーだが、原曲にこんなイントロはなく、すぐに歌が始まる。
サンタナ版の知名度の高さはイントロの魅力ゆえだろう。
メタルの帝王オジー・オズボーンも心引かれたのか、「フール・ライク・ユー」という曲で、このイントロを拝借している。
アルバム「天の守護神」収録曲では「僕のリズムを聞いとくれ(オエ・コモ・バ)」もいい。
ラテン音楽のバンドリーダー、ティト・プエンテの曲のカバーだが、圧倒的に、サンタナ版が有名だ。アレンジがうまいのだろう。
原曲ではフルートのところをサンタナがギターで奏でる。終盤の演奏が聴きどころだ。
サルサの女王セリア・クルス(歌手)も、この曲をカバーしているが、これはまたの機会に取り上げたい。