ナイン・インチ・ネイルズ「ハピネス・イン・スレイバリー(リミックス)」
Nine Inch Nails 「Happiness In Slavery (Remix)」
インダストリアル・ロックの雄、ナイン・インチ・ネイルズの曲で一番好きなのは「ハピネス・イン・スレイバリー(リミックス)」。
1992年のEP「ブロークン」収録の原曲ではなく、そのリミックス版EPで同年発売の「フィックスト」収録のものだ。
かつて毎晩聴いたほど、お気に入り。
まずは、長いイントロがいい。
♪ドゥドゥンドゥドゥン、ドゥドゥドゥンドゥンドゥンドゥン…というエレクトロビートと、♪ズッチャーン…ズッチャーン…というドラムの打ち込みが繰り返され、♪パーワッパッパッパパ…といった電子音のループが加わり、盛り上がる。
このうねり感がいい。
時折、叫び声、うめき声が入る。原曲と違って、歌はない。
中盤、♪ダンダンダン、ダガダンダンダン…というドラム連打と、浮遊するような電子音も聴きどころだ。
サラウンド感満点で、ヘッドホンかイヤホンで聴いてほしい曲。
機械が空回りするような音がして、♪プツッ…と途切れる唐突な終わり方も、面白い。
この曲で慣れていたから、エレクトロビート繰り返しの長いイントロでじらすティエストのトランス・ミュージックも好きになった。
一方で、EP「ブロークン」収録の原曲は、メタル寄りか。いきなり叫び声で始まり、ただただ、騒がしいだけ。深みが感じられない。
私は、電子音盛りだくさんのリミックス版のほうが好みだ。
収録曲「ウィッシュ」も、「ブロークン」収録の原曲より、エレクトロビート繰り返しのイントロが付加された「フィックスト」収録のリミックス版のほうがいいと思う。長いイントロが期待感をあおる。
だいたい、音楽で、リミックス版のできばえが原曲を超えることは、なかなかないと思うが、「ハピネス・イン・スレイバリー」は例外だ。
ここまで力が入ったリミックスは珍しいのではないだろうか。
そもそも、「ブロークン」(破壊)と「フィックスト」(修理)は、対になる作品だと思うので、聴き比べて楽しんでくれということで、力が入っているのかもしれない。
ナイン・インチ・ネイルズの作品で、好きなアルバムを問われたら、迷わず、1994年の「ザ・ダウンワード・スパイラル」を挙げる。これは傑作。収録曲が粒ぞろいで、ピンクフロイドやプリンスへのオマージュも面白い。
しかし、この1曲を選ぶとしたら、やはり、「ハピネス・イン・スレイバリー(リミックス)」だ。