コンスピラシー・オブ・ノイズ「チックス・ウィズ・ディックス・アンド・スプラッター・フリックス」
Conspiracy Of Noise 「Chicks With Dicks And Splatter Flicks」
覆面バンド、コンスピラシー・オブ・ノイズの1993年のアルバム「チックス・ウィズ・ディックス・アンド・スプラッター・フリックス」は、インダストリアル・ロックの隠れた傑作。
私の好きな電子音もたっぷりで、大学時代に手に入れ、気に入った。
エログロ感あふれるアルバム名だが、ネイキッド・シティ(サックス奏者ジョン・ゾーン率いる前衛音楽グループ)と比べれば、普通に聴ける音楽だ。
CDのライナーノーツによると、ポール・ヒーロー(ギター奏者)、W・P・モヘア(ベース奏者)、スライド・ワイルドリィ(ドラム奏者)というメンバー名からして偽名っぽいとのこと。
のちにネットを探索して、エドワード・ボールという音楽家が絡んだプロジェクトだと知った。
このバンドの作品は、このアルバムしか知らない。
何だか、よくわからない人たちだが、音楽は、かっこいい。
一番好きな収録曲は「ビジネス・イズ・ビジネス」。SF感というか、宇宙感が漂う。
♪ジャガジャガジャガジャガ…というギターリフが最後まで、ずっと繰り返される。
そして、機械みたいな声。♪ウウウー…というサイレン音。♪ピシュー…とか、♪シュピー…とか、レーザー光線的な電子音。宇宙船の通信みたいな音。「アー」「アッアー」という声。これらが入り交じる。
収録曲「ヤング、ダム・アンド・フル・オブ・カム」も、お気に入り。
流れ星のようなキラキラした電子音で始まり、♪ジャージャージャージャー…といったギターが飛び込んでくる。
「アハン、アハン」「エバー」という女性のささやき声が時々、入る。この声が頭に染み込む。
収録曲「アイド・ラブ・トゥ・プラグ・ユー・イン」は、工場の機械音で始まり、「キャアアッー」と女性の悲鳴が響く。
そして、♪ティロティロティロ…というトレモロみたいな電子音と、♪ジャジャッ、ジャジャジャジャジャー…というギターの繰り返し。
あえぎ声も入る。なんか、会話みたいな声も入る。工場の機械音で終わり。インダストリアル感十分だ。
収録曲「E:メリカー」は、ドラム連打とリズミカルなギター。
♪テケテケテンテンテン…という、ギターの音色が心地よくて、癖になる。
宇宙船の通信みたいな声が入る。
うがいみたいな変な声と笑い声が混じる曲「ジャークオフ」、デスボイスの歌が入る曲「コンテント・アンド・コンテンプト」も面白い。
どの曲も同じメロディー繰り返しに、電子音や叫び声を加えたサウンドコラージュ。
ミニストリーやナイン・インチ・ネイルズと比べると、めちゃくちゃ感というか、カオス度が高いという印象。
ちなみに、ドラムは、打ち込みではなく、生演奏だそうだ。
アルバムを通して聴いても、似たような曲ばかり。
よく言えば、統一感が高い。
アルバム全体がループの嵐だとも言えるが、全く飽きない。
この繰り返しの心地よさは、フリージャズの巨人オーネット・コールマン(サックス奏者)とか、トランス・ミュージックのティエストの音楽を思い出す。