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デレリアム「シロフェニカン」 初期はデッド・カン・ダンスのようなダーク路線 のちの作品「フォーガットン・ワールド」と聴き比べると面白い (おすすめ名曲名盤)

Syrophenikan

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デレリアム「シロフェニカン」

Delerium 「Syrophenikan」

 

カナダの音楽ユニット、デレリアムは、エニグマやディープ・フォレストのように宗教音楽や民族音楽とエレクトロビートを組み合わせつつ、ゲストの女性歌手を前面に出して、ポップさも併せ持つ。

グレゴリオ聖歌とエレクトロビートを背景に、ゲスト歌手サラ・マクラクランがゆったりと歌う曲「サイレンス」(1997年のアルバム「カルマ」に収録)がヒットした。

 


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カルマ

カルマ

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1990年代半ばにゲストの女性歌手を前面に出すようになる前の初期デレリアムは、デッド・カン・ダンスを思わせる妖しくてダークな音楽だった。

中心メンバーのビル・リーブがインダストリアル畑出身なので(スキニー・パピーに一時在籍)、インダストリアル感も漂う。

 

それがよく分かるのが、1990年のアルバム「シロフェニカン」だ。

 

オープニング曲「エンボディイング」からして、重々しく暗い。

♪ダンダンダン、ダンッダンッダンッ…という野生的な太鼓のイントロは、映画「コナン・ザ・グレート」(1982年、米国)のオープニングテーマ曲「クロムの鉄床」を思わせる。

地の底から響くような低い声もあり、デッド・カン・ダンスの曲「フロンティア」みたいな雰囲気だ。

 


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収録曲「シュラウド」は、♪タン、タカタン、タン、タカタン…という軽快なパーカッションで始まり、野性的な太鼓と、怪鳥の鳴き声が加わる。

そして、「アー、アアアー」という厳かな感じの歌声。

デッド・カン・ダンスの曲「ユルンガ」の中盤以降みたいな雰囲気だ。

 


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収録曲「ミソス」は、エレクトロビートが強め。♪トン、トコトン、トン、トコトン…というリズムが繰り返され、悲鳴や機械みたいな音が入る。

 


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収録曲「サーマン」は、きれいめの曲だ。

もの悲しいメロディーで始まり、美しい音色のキーボードやエレクトロビートが加わる。

中盤から、♪ピコピコピコピコ…というゲームみたいな電子音が加わり、テクノみたいな感じになる。

 


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一番好きな収録曲が「フォーガットン・プレイス」。

妖しさがありつつ、暗さは薄く、のちの作品に通じる気配が一番感じられる。

♪ビョーン…という弦楽器みたいな音のイントロが異国情緒を醸し出し、パーカッションや電子音が加わる。

そして、「ムームームー」といった鼻歌みたいな女性のスキャットがいい。

もっと明るく、美しくすると、のちの曲「アンジェリクス」(2006年のアルバム「ヌアージュ・デュ・モンド」に収録)みたいだ。

 


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いわば、「シロフェニカン」は、デレリアムのバックボーン的な作品。

ここで見せる妖しさ、暗さは、のちの作品の隠し味になって、深みを出している。

 

それがよくわかるのが、アルバム「カルマ」の収録曲「フォーガットン・ワールド」。

初期デレリアムの妖しさ、暗さをよく残しつつ、美しく聴きやすい曲に仕上げていて、聴き比べると、デレリアムの進化が実感できるはずだ。

この「フォーガットン・ワールド」は、デッド・カン・ダンスの看板ボーカリスト、リサ・ジェラルドの歌声をサンプリングして、加えている点にも注目したい。

デッド・カン・ダンスへのオマージュかと考えると、興味深い。

 


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