マノウォー「キングス・オブ・メタル」
Manowar 「Kings Of Metal」
漫画に例えるなら、「魁!男塾」(宮下あきら)か、「熱笑!花沢高校」(どおくまん)。
メタルバンド、マノウォーの漢(おとこ)ぶりは、そう言い表すしかない。
AC/DCやZZトップが振りまく無骨な男臭さとは違う。
違う意味で、クサいのだ。
とにかく、ツッパる。大げさで、やり過ぎ感いっぱい。
そこが、いい。
キャッチフレーズは「偽メタルに死を」。
大音量のライブで知られ、ギネスの世界記録に認定された。
中心メンバーのジョーイ・ディマイオ(ベース奏者)は「ボリュームを下げるくらいなら、死ぬ」と言い張ったという。
そして、「戦士」「英雄」をイメージさせる叙情詩的な楽曲たち。
アルバムジャケットも、だ。
ヒロイックファンタジー映画「コナン・ザ・グレート」が好きな人は、気に入ると思う。
こうした漢臭さを放ちつつ、本気なのかシャレなのかが混沌としていて、笑える。
それがマノウォー。やはり「男塾」「花沢高校」に例えるしかない。
魅力をよく味わえるのが、1988年のアルバム「キングス・オブ・メタル」だ。
何と言っても、名曲「ヘイル・アンド・キル」が含まれている。
私は、この曲を聴いて、マノウォーが好きになった。
「癖になるギターのフレーズを考えてみた」という記事でも書いたが、♪ジャジャジャー、ジャジャジャージャジャジャージャー…というギターリフが癖になる。
「ヘイル! ヘイル! ヘイル・アンド・キル!」というコールと相まって、頭に染み込む。
中盤のギターソロもいい。そして、無駄に力の入ったシャウト。
どれも、素晴らしい。
収録曲「クラウン・アンド・リング」も、好きだ。
荘厳なパイプオルガンと教会音楽風の男声コーラスが続く。
オジー・オズボーンの「センター・オブ・イタニティ」や、クスコの「ジャバル・タリク」を思い出させる曲だ。
このアルバムは、「ヘイル・アンド・キル」のような疾走感あふれる曲と、「クラウン・アンド・リング」のようなバラードをほどよくセット。
もう一捻りして、趣向を凝らした曲も、いろいろとあるのが、面白い。
例えば、オープニング曲「ホイール・オブ・ファイア」は、タイトルから想像されるように車をイメージしている。
導入部は、バタンというドア音、エンジン音、タイヤがきしむ音。
ワム!の「クラブ・トロピカーナ」を思わせる出だしだ。
その後は、♪ジャガジャガジャガジャガ…といった疾走になる。
収録曲「スティング・オブ・ザ・バンブルビー」は、オペラ「サルタン皇帝」の間奏曲「熊蜂の飛行」(作曲リムスキー=コルサコフ)を、ディマイオのこれ見よがしなベース速弾きでアレンジしたもの。
本当にハチの羽音みたいで面白い。アルバムの中で、よいアクセントになっている。
意表を突くのが、収録曲「ウォリアーズ・プレイヤー」。
これは、曲ではない。子どもに英雄の伝説を聞かせている風な、おっさんの語りが延々と続く。
物語の語り手のナレーションで始まる「コナン」の導入部を思い出した。
騎馬が駆ける音や風の音、落雷の音、叫び声も適宜入り、映画の一場面みたいだ。
この後にラストを締めくくる暴れ曲「ブラッド・オブ・ザ・キングス」につながる流れもいい。
不可解なのが、CDのみのボーナス曲「プレジャー・スレイブ」だ。
女性のセクシーなあえぎ声に、ワハハハといった男の笑い声やギターの音が加わり、ゆったりとした曲に移行する。「英雄」とくれば、「色」が付き物ということだろうか。
たしかに、「コナン」にも、お色気シーンはあった。
ただ、マノウォーのあるべき姿としては、いかがなものか。
「男塾」も、「花沢高校」も、お色気は完全に振り払っていた。
この曲が紛れ込んだために、漢ぶりを下げてしまったのが、残念でならない。