ウェザーリポート「8:30」
Weather Report 「8:30」
ジャズバンド、ウェザーリポートの1979年のライブ盤「8:30」は、ライブ演奏らしいスリリングな作品だ。
キーボード奏者ジョー・ザビヌル、サックス奏者ウェイン・ショーター、ベース奏者ジャコ・パストリアスの三者三様の演奏が楽しめる。
最大の聴きどころは収録曲「ブラックマーケット」。
スタジオ録音(1976年のアルバム「ブラックマーケット」に収録)の同じ曲より、アップテンポにアレンジしており、こっちのほうが圧倒的にいい。
♪ズカダカズカダカ…と煽るようなドラムに続いて、♪ボーンボ、ボーンボ…とジャコのベースが跳ね回る。そして、ザビヌルのピロピロなシンセサイザー。
このイントロがとてもいい。繰り返し聴きたくなるほどだ。
後半のショーターのソロも聴かせる。♪プヒプヒプヒ…とか、プヒープヒープヒー…とか、ショーター節がさえる。
ショーターは、終盤のザビヌルのソロでも、♪プッ…とか、♪プヒッ…とか、絶妙な合いの手を入れる。これもいい。
ジャコも加わって盛り上げ、最後はザビヌルが、♪ピャッピャッ、ピャッピャッ、ピャッ!…と高らかに締めくくる。これもいい。
スタジオ録音版はザビヌル中心の演奏で、ゆったりとしていて、エキゾチック感や妖しさを前面に出す。ラストは、じんわりとフェードアウトする。
このライブ演奏を聴いた後だと、じれったく感じてしまうくらいだ。
収録曲「スラング」も必聴。
スタジオ録音のアルバムにはない曲で、ジャコのソロ。
敬愛するジミ・ヘンドリックスの名曲「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」のフレーズも奏でる。♪ジャーン、ジャージャージャ、ジャージャジャーというフレーズだ。
収録曲「ティーンタウン」もいい。
スタジオ録音版(1977年のアルバム「ヘヴィ・ウェザー」に収録)より、ショーターが前面に出る。
スタジオ録音の短く絶妙な合いの手が最高だが、こうやって、聴かせるショーターもなかなかいい。
♪バーパパー、パ、パーパパ…とか、♪パパパッ、パパパッ、パッ、パッ、パッ…といった演奏を見せる。
ここではジャコはバックに回る。
そして、ザビヌルを含め、3人が渾然一体となって、盛り上げる。
どっちが好きかと言われたら、ジャコのベースをしっかりと聴かせるスタジオ録音版だけど、このライブ演奏もとてもいい。
収録曲「バードランド」は、乗り重視の軽めの演奏。弾き方を省略したりしている。
スタジオ録音版(アルバム「ヘヴィ・ウェザー」に収録)のような濃厚さや緻密さはない。
締めくくりのザビヌルのピロピロもない。
どっちが好きかと言われたら、もちろん、スタジオ録音版だけど、もともと良い曲なので、やっぱり、いい。
こういう軽めの演奏もありかと思った。