セリア・クルス「ビリンバウ」
Celia Cruz & Willie Colon 「Berimbau」
「サルサの女王」と称えられるキューバ出身の歌手セリア・クルスの歌で、ヒット曲「キンバラ」と同じくらいに私が好きなのは「ビリンバウ」だ。
1974年のアルバム「セリア&ジョニー」(ジョニー・パチェコと共同制作)に収録された「キンバラ」は、ラテンパーカッションのリズムと「キンバラ、クバラクマ、キンバンバ…」と繰り返す歌詞が癖になる。
セリアの力強い歌声が楽しめるアップテンポな曲だ。
これに対し、1981年のアルバム「セリア&ウィリー」(ウィリー・コロンと共同制作)に収録された「ビリンバウ」は、当時50代半ばのセリアの艶っぽい歌声が楽しめる。
サビの部分が特に艶っぽくて甘い。何だか、癒やされる。
ラテンパーカッション満載で、アップテンポな曲なのだけども、セリアは力強さを抑え、得意の「アスーカル!」など掛け声もない。
メリハリを付けつつ、ため息のような余韻を感じさせる歌い回しで、それが艶っぽく感じさせるのかもしれない。
セリアの歌声に限って言えば、「キンバラ」よりも好きだ。
「ビリンバウ」はボサノバの定番曲のひとつ。
セルジオ・メンデスやアストラッド・ジルベルトも取り上げているので、聴き比べると、面白いだろう。
私は、セリアが歌ったものが「ビリンバウ」のベストだと思う。
セリアは、若い頃から母国でスターになり、日本の歌手に例えれば、美空ひばりのような存在らしい。
米国に亡命し、新天地でも花開いて「サルサの女王」と呼ばれるまでになるのだが、他人のヒット曲も気負いなくカバーして、光った。
セルジオがビートルズ・ナンバーもカバーしたのに対し、セリアは、ラテン系の曲しかカバーしていない。
意図的なのかどうかはわからないが、興味深い。
例えば、ジプシーキングスのヒット曲「バンボレオ」。
所属したバンド「ファニア・オール・スターズ」の1988年のアルバム「バンボレオ」に収録されている。
疾走感のある原曲とは違い、ゆったり、伸び伸びとした歌い方だ。
(余談だが、私は以前、このCDを、Amazonに出品していたドイツの業者から中古で買ったら、バキバキにケースが割れて役に立たないものが届いた。海外の業者に注文して商品が届かなかったことも何度かある。ご注意を)。
サンタナがヒットさせたラテンの定番曲「オエ・コモ・バ」も演じた(サンタナ版は「僕のリズムを聞いとくれ」との邦題が付いた)。
2000年のアルバム「シェンプレ・ヴィヴィレ」に収録されている。
セリア版は「Celia’s Oye Como Va」(セリアのオエ・コモ・バ)というタイトル。
この曲の作者ティト・プエンテと親交があっただけに、入れ込みようが感じられる。
セリアはこの時、70代半ばで、さすがに声はしわがれたが、それが、この曲の雰囲気に妙に合う。
健在ぶりを見せつける好演となっている。
さらにすごいのは、このアルバムに収録された「オエ・コモ・バ(ダンス・リミックス / ラジオ・エディット)」。
タイトル通り、ダンスミュージックにアレンジしたもので、ヒット曲「キンバラ」のフレーズも取り入れながら、ノリノリで歌う。
(日本盤だけのボーナス曲。残念ながら、YouTube動画も、iTunes商品も見つけられなかったため、お聴かせできません。上に紹介したAmazon商品は輸入盤のため、この曲は入っていません。ご注意ください)。
2001年にはヒップホップを取り入れた曲「ラ・ネグラ・ティエネ・トゥンバオ」(同名アルバムに収録)を放った。
老いてますます盛んとはセリアのことだろう。