スティーリー・ダン「ガウチョ」
Steely Dan 「Gaucho」
スティーリー・ダンが1980年に放ったアルバム「ガウチョ」は洗練の極みだ。
ドナルド・フェイゲン(キーボード、ボーカル)とウォルター・ベッカー(ベース)が多数のミュージシャンを使って厳選した演奏で曲を作るユニットは、これで全盛期を締めくくり、長い活動休止に入った。
収録曲「タイム・アウト・オブ・マインド」「バビロン・シスターズ」は、ともに、クールな演奏とコーラス陣の歌声が美しい。
「タイム・アウト・オブ・マインド」は、私が大好きなサックス奏者デビッド・サンボーンが加わっているのが、うれしい。
ただし、背景的に使われただけで「泣きのサンボーン」と呼ばれる本領は発揮されていない。
この曲は、フェイゲンとベッカー以外に、トランペット奏者ランディ・ブレッカー、サックス奏者マイケル・ブレッカーら13人も参加し、詰め込みすぎだと思う。
ギター奏者マーク・ノップラー(ダイアー・ストレイツ)くらいしかソロがなく、もったいない。
海原雄山か、と言いたくなる贅沢さだ。
(原作・雁屋哲、作画・花咲アキラの漫画「美味しんぼ」で、たしか、雄山が、焼いた牛肉の塊から、生感を残しつつ、ジューシーになった中心部だけを切り出して、提供した話があったと思う)。
「バビロン・シスターズ」は、イントロのキーボードが美しい。
コーラスも印象的。「バビロン・シスターズ・・・シェイク・イット」「テル・ミー・アイム・ジ・オンリー・ワン」というところとか。
特に面白いのは、ランディのトランペット演奏だ。要所要所で、少し出てくるだけなのだが、初期のダンが取り入れていた古いジャズの雰囲気を思い出させる音色。
これがいいアクセントになっている。チャーリー・パーカーに捧げた曲「パーカーズ・バンド」や、デューク・エリントンの曲「イースト・セントルイス・トゥードゥル・オー」のカバーを思い出した。
2曲とも、1974年のアルバム「プレッツェル・ロジック」に収録。
アルバム「ガウチョ」収録曲では、「グラマー・プロフェッション」も、なかなかいい。映画音楽みたいなドラマチックな感じの曲だ。
私が一番好きな曲「アルタミラの洞窟の警告」(1976年のアルバム「幻想の摩天楼」に収録)を思い出した。