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パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラ「地中海の舞踏/広い河」 超絶技巧が炸裂するギターデュオ演奏の最高峰 高速ユニゾンあり、速弾きの掛け合いあり (おすすめ名曲名盤)

パコ・デ・ルシア、アル・ディ・メオラ「地中海の舞踏/広い河」

Paco De Lucia , Al Di Meola 「Mediterranean Sundance / Rio Ancho」

 

ギターデュオ演奏の最高峰。

フラメンコのパコ・デ・ルシアと、ジャズ・フュージョンのアル・ディ・メオラという速弾きギター奏者2人の超絶技巧が炸裂する。

1980年のライブで共演。適度に緩急を付けながら、2人のバトルが繰り広げられ、11分半、ずっと傾聴してしまう熱演だ。

 

子どもの頃、父がラジオ番組からテープに録っていて、よく聴かされ、好きになった。

パコが1981年のライブで、ジャズピアノ奏者チック・コリアと演じた「イエロー・ニンバス」に匹敵するくらい大好きな演奏だ(この演奏も父にテープで聴かされた)。

 


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「地中海の舞踏/広い河」は、ジャズ・フュージョンのギター奏者ジョン・マクラフリンを加えた3人の1980年のライブで演じられた。81年発売の3人のライブ盤「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」に収めてある。

 

ディ・メオラの曲「地中海の舞踏」とパコの曲「広い河」のメドレーで、「地中海の舞踏」で始まって、「広い河」に変化し、また「地中海の舞踏」に戻る構成。左チャンネルがパコ、右チャンネルがディ・メオラ。ヘッドホンか、イヤホンで聴いてほしい。

 


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以下、演奏の要旨。

0:00〜

「地中海の舞踏」の緩やかなメロディーでスタート。

♪チャララララ、チャララララ、チャララララ、チャチャッ、チャンチャン…という高速ユニゾンを4回、間を置いて、さらに4回繰り返す。

まずは、ここで、聴く者を引き込む。

0:55〜

パコのゴルぺ(ギターの表面を指先で叩いて鳴らす、フラメンコの奏法)を合図に、「広い河」に突入。まずはディ・メオラが主導し、パコは合いの手。

2:55〜

パコが、♪ジャン、ジャガジャガ…とラスゲアード奏法(弦をかき鳴らすフラメンコの奏法)を見せながら、主導権を握る。

3:25〜4:00辺りのパコの速弾きが序盤の聴きどころ。

4:25〜

パコが、♪タタラタラタタン、タタラタラタタンタッタタラララ…という「広い河」のメインテーマを奏でる。ディ・メオラは、♪ジャン、ジャガジャガ…と合いの手。

5:00〜

中盤のヤマ。パコが、再び「広い河」のメインテーマを締めくくりに奏でて、徐々にフェードアウト。この間、ディ・メオラは、♪ズンジャガ、ズンジャガ…と絡む。

5:40〜

ディ・メオラ主導になり、「地中海の舞踏」に復帰。

5:50〜6:25辺りの演奏も聴きどころ。

その後、ちょっとクールダウン。

6:45〜

パコ主導。流れるような速弾き。

7:10〜

ディ・メオラ主導。

7:50〜

パコ主導。

8:10〜

クールダウン。

8:30〜

パコ主導で盛り上がり、ディ・メオラが♪ズンジャガ…と絡む。ここも聴きどころ。

8:45〜

ディ・メオラ主導。ここの演奏もいい。

9:25〜

クールダウン。最終コーナーに入る。

10:00〜

間を置いて、掛け合い。いよいよ、スパートかけるぞ、ええか?という感じの呼吸合わせ。

10:20〜

最大の盛り上がり。パコの速弾きに続いて、ディ・メオラも速弾き。競うように速弾いて高まったところで、2人そろって、♪ジャッジャガジャッジャッ、ジャッジャガジャッジャッ…とラスゲアード奏法の嵐になり、最高潮に達する。

11:00〜

♪ジャラランッ…と、いったん区切り、緩やかなメロディーに入る。

高速ユニゾンを4回繰り返し、♪ジャンッ…で締めくくり。

(以上、演奏の要旨)

 

「地中海の舞踏」「広い河」という、ふたつの曲についても、少し説明する。

 

「地中海の舞踏」は、ディ・メオラが、パコと共演するために作った曲。

ディ・メオラの1977年のアルバム「エレガント・ジプシー」に収めてある。

チャカポコなパーカッションが1分ほど鳴るイントロがある(ライブ演奏にパーカッションはない)。

 

(以下に紹介する動画はイントロなしのもの。イントロありのが見つからなかった)


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このスタジオ録音版「地中海の舞踏」は迫力不足だ。

お互いに、初めまして、モジモジ的な、お見合い演奏。

パコともあろう者が、どういうことか(ディ・メオラもだが)。

 

パコは、チックがパコにささげた曲「イエロー・ニンバス」も、1981年のライブ・アンダー・ザ・スカイでは最高の演奏を見せているのに、チックに招かれてスタジオ録音で再演したもの(チックの82年のアルバム「タッチストーン」に収録)は、全く腰砕け(チックもだが)。

パコはこの頃、ジャズ・フュージョンの演奏家と共演しながら、伝統的なフラメンコにはない即興演奏を模索していた。

だからこそ、ライブ演奏で、気合いが高まったのかもしれない。

ディ・メオラやチックも、それを受けて燃えたのだろう。

(ちなみに、パコが、即興演奏に目覚めたのは、盟友のフラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラに刺激を受けたためだと思われる)。

 

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話を戻すと、、、

スタジオ録音の「地中海の舞踏」よりも、ライブの「地中海の舞踏/広い河」を聴いてほしい。スタジオ録音版を聴いて、2人がこの程度かと思われると、嫌なので。

 

ディ・メオラのアルバム「エレガント・ジプシー」収録曲では「レース・ウィズ・デビル・オン・スパニッシュ・ハイウェイ」が大おすすめ。

ディ・メオラの緊迫感あふれる演奏が聴ける最高傑作。

メタルバンドのライオットがカバーした。

 


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一方、「広い河」は、パコの1976年のアルバム「アルモライマ」に収録。

スタジオ録音版では、パーカッションが入る。

ライブには及ばないが、原曲もなかなかいい。

このアルバムの収録曲では「アルモライマ」が大おすすめ。

パコがフラメンコの源流のひとつであるイスラム音楽の弦楽器ウードを弾く。

 

(以下の動画の演奏は、イントロなど序盤を省いており、アルバム収録分より短いが、冒頭にパコがウードを弾いている映像が入っているので、これを紹介しておく)


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なお、ライブ盤「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」には、ほかにも、パコとマクラフリンの共演、ディ・メオラとマクラフリンの共演、3人の共演があるが、パコとディ・メオラの「地中海の舞踏/広い河」に尽きる。

このライブ盤は、この1曲を聴くだけだとしても、十分すぎるほど価値がある名盤。

 

パコとマクラフリンの共演は、2人のライブ盤「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」がおすすめ。

マクラフリンは、これ見よがしなカオスな演奏が持ち味で、共演者をかすませるのだが(例えば、ジャコ・パストリアスやカルロス・サンタナは被害者)、なぜか、パコとは穏やかな演奏。マイルス・デイビスに対しても。2人への敬意ゆえか。

このライブ盤については、近日中に紹介する。

 

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