パコ・デ・ルシア、ジョン・マクラフリン「スペイン」
Paco De Lucia & John McLaughlin 「Spain」
超絶技巧のギター奏者2人が、1987年のライブで、またも相まみえた。
フラメンコ界のパコ・デ・ルシアと、ジャズ・フュージョン界のジョン・マクラフリン。
ライブ盤「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」の収録曲「スペイン」では、速弾きの聴き比べが楽しめる。
左チャンネルがパコ、右がマクラフリン。
ヘッドホンか、イヤホンで聴いてほしい。
前半はパコが主導し、後半はマクラフリンが前に出る。
ともに速弾き奏者として知られるが、聴き比べると、個性がうかがえる。
パコは滑らかで、流れるような感じ。
マクラフリンはメリハリを付け、揺らめくような感じ。
まるで、水と火といったところか。音色は、パコのほうが私の好みだ。
2人のユニゾンとなる終盤が聴きどころ。
この曲「スペイン」は、ジャズピアノ奏者チック・コリアの名曲。
コロコロしたエレクトリックピアノの音色が美しい。
それをギター2本でというのも、面白い趣向だ。
ライブ盤「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」は、2人の仲の良さが感じ取れる点でも、興味深い。
ジャズ・フュージョン界屈指の速弾きギター奏者アル・ディ・メオラを加えた3人の1980年のライブとは、かなり趣が異なる(1981年発売のライブ盤「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」に収録)。
パコも、マクラフリンも、リラックスして、共演を楽しむ様子が伝わってくるのだ。
パコの生涯をたどるドキュメンタリー映画「パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト」(2014年、スペイン)の関係者インタビューでも、チックやカルロス・サンタナは神妙というか、お世辞臭さも漂わせるのに対し、マクラフリンは軽い。
「(即興演奏を模索するパコに)心配するな。思うようにやればいいんだ、と言ってやったよ。わはは」という感じ。
2人が親しいのがわかる。
(この映画はファン必見。若い頃のパコの映像や写真が出てくる。私はDVDを買った。現在、Amazonプライムでも見られる)。
ライブ盤「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」に話を戻す。
収録曲「チキート」は、パコの曲。
パコのセクステット(六重奏団)のライブ演奏のほうが好きだが、ギター2本で高速ユニゾンや掛け合いを繰り広げる、マクラフリンとのライブ演奏も、なかなかだ。
(パコのセクステットの1984年のライブ盤「ライブ・・・ワン・サマー・ナイト」は、またの機会に紹介したい)。
収録曲「フレボ」「ガーディアン・エンジェル」は再演だ。
(ライブ盤「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」で、「フレボ」はパコとマクラフリンの共演、「ガーディアン・エンジェル」は、ライブ演奏ではなくスタジオ録音で、ディ・メオラを加えた3人の共演)。
「フレボ」「ガーディアン・エンジェル」とも前半マクラフリン主導、後半パコ主導。
緊迫感漂う初演に対し、穏やかで、リラックスした雰囲気だ。
お互いに手の内がよくわかっていて、一体感も高い。
「ガーディアン・エンジェル」は、マクラフリンの遊び心が目立つ。
ひねった音色を出したりとか、1人やまびこみたいな演奏をしたりとか。
音色の美しさや緊迫感は「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」、演奏の面白さや一体感は「パコ&ジョン ライブ・アット・モントルー1987」といったところか。