ミニストリー「アンダーカバー」
Ministry 「Undercover」
インダストリアル・ロックの雄、ミニストリーの2010年のアルバム「アンダーカバー」は、収録13曲中、8曲がブラックサバス、ローリング・ストーンズらの名曲のカバー。あとは「スティグマータ」など持ち曲のリミックスとなっている。
余興みたいな企画だが、入っている曲はいい。
特に、サバスの「アイアンマン」のカバーが秀逸。これ目当てで、CDを買った。
「アイアンマン」は、サバスの原曲を超える、かっこよさだ。
いや、おどろおどろしい原曲も好きなので、別のかっこよさを引き出したと言ったほうがいいだろうか。とにかく、疾走感が高い。
♪ピンピンピンピン…という電子音と、♪ダララッタ、タッタ…というビートのイントロからして、わくわく感をそそる。
「ア~イ、アム、ア~イアンマ~ン」という声は、おそらく、ちゃんとした機械で、エフェクトをかけた不気味な声(原曲では、オジー・オズボーンが扇風機の前で発声し、機械の声のようなエフェクトをかけたという。その姿を想像すると、可愛い)。
♪ギャーンギャーン、ギャーギャーギャン…というギターのリフは、より暴力的になっている。速弾きのギターソロもいい。
これは、繰り返し、聴きたくなる名カバーだ。
同じくサバスの「パラノイド」も、イントロからして、いい仕上がり。♪ミョーンミョーンミョーン…というギターリフと、♪ダラタタ、ダラタタ…というビート。
♪ジャララッチャ、ジャララッチャ…といった音もインダストリアル感たっぷり。♪チュルルルル…みたいなギターソロもいい。
ミニストリーの調理法は、サバスの曲と相性がいいんだろうか。「アイアンマン」も、「パラノイド」も、この演奏をバックに、オジーに歌ってもらいたくなる。
ストーンズの「黒くぬれ」のカバーも、意外にいいというか、原曲より好みだ。中盤のスペイン風のギターがよいアクセント。
このアルバム「アンダーカバー」には、オジー(サバス)と同様に私が大好きなバンド、AC/DCやZZトップの曲もある。
いい感じではあるけど、原曲のほうが好みだ。
AC/DCの「サンダーストラック」のカバーは、この曲の醍醐味であるイントロのライブ感が足らないように思う。
そして、これはどうしょうもないことだと思うが、やはり、AC/DCの曲にはブライアン・ジョンソンの熱いダミ声が合う。
かつて、AC/DCのツアーで、ブライアンが病気のため離脱し、ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズが代役を志願して務めたことがある。
そのライブの映像を見ると、ブライアンの存在感の大きさに気づく。
アクセルも個性的で素晴らしいボーカリストだが、AC/DCの音楽にはブライアンのダミ声がしっくりと合うのだ。
ZZトップの「シャープ・ドレスド・マン」のカバーは、タメが足らない。「アーウッ!」という熱い声がないのも、さみしい。
ジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」のカバーも、原曲に及ばない。あの妖しさがない。「アーッ」という熱い声も。
おなじみのメロディーも、ほかの音がうるさすぎて聴き取りにくいのが残念だ。
あと、ミニストリーの持ち曲「スティグマータ」のリミックスは、なかなかだが、原曲を超えてはいない。何より、イントロのわくわく感がない。