スロッビング・グリッスル「D.o.A(最終報告書)」
Throbbing Gristle 「D.o.A : Third And Final Report」
インダストリアル・ミュージックの始祖となったバンド、スロッビング・グリッスルの音楽は、たぶん、好みが分かれるだろう。
1978年に放ったアルバム「D.o.A(最終報告書)」は、電子音が美しいメロディーをつむぐ収録曲「AB/7A」から聴くと、とっつきやすいはずだ。
「AB/7A」は、列車が走る情景が目に浮かぶようなリズムを電子音が刻む。
往年のテレビアニメ「ゼンダマン」が思い出され、「♪ゼンダー、アクダー…」と口ずさみそう。
テクノというか、エレクトロニカというか。
スクエアプッシャーの曲「ア・ジャーニー・トゥ・リーダム」も思い浮かんだ。
収録曲「デッド・オン・アライバル」になると、テクノっぽさに不気味さが加わる。
♪ピコピコピコピコ…と、コミカルな電子音のリズムに、♪ギャーン…とか、♪プイィーッ…といった変な音が加わり、ノイズ感を増していく。
収録曲「ホーム・タイム」は、ピンクフロイドを思わせるような不気味な電子音を背景に、幼子のかわいらしい話し声が続く。笑い声も入る。
両親が外出中に、子どもたちが家で遊んでいて、そこに謎の怪物が迫っているという情景かと想像させる。
無邪気な子どもの姿に毒気を抜かれたか、怪物が襲うのをやめて去って行くといった雰囲気で終わる。
収録曲「バレー・オブ・ザ・シャドウ・オブ・デス」は、まさにインダストリアル・ミュージックという趣だ。
今度は、大人がおそらく食卓で会話する声。それに、機械の作動音がかぶせてある。
そして、♪カチカチカチカチ…と、時計のような音が、時限爆弾でも隠してあるのかと、不穏な空気を醸し出す。
ちょっと、ピンクフロイドの曲「タイム」を想起させる。
中盤以降は、機械音とカチカチ音がなくなる。
会話は続き、笑い声さえ飛び出す。
あのカチカチ音は何だったのかと、聴く者だけを不安に陥れる曲。
収録曲「ウィーピング」は、ノイズ感が高く、陰気な曲。
♪ピーン、ピンピ、ピンピ、ピン…というギターの繰り返しで始まり、不気味な感じ。
ピンクフロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐」を思い出させる。
男の歌声と、バイオリンのようなギーギー音が加わる。
♪カンカンカンカン…と、何かが落下するような、エコーのかかった音も。
ピンピンピンピン…と弦楽器のエコー音も加わる。
♪カンカンカン…、♪ピーン、ピンピ、ピンピ、ピン…、♪ギーギー…の合奏。
何だろうかと思っているうちに、フェードアウトして終わる。
男の歌声はよく聴き取れないが、失恋して落ち込む男の心情を歌っているようだ。
(ボーナスディスクを加えた近年の商品は、ジャケット右下の少女の画像が消されているので、注意を。「児童ポルノ」と判断されたということだろうか)
このアルバム「D.o.A(最終報告書)」は、大学時代に買って、ちょっと聴いたけど、ぴんとこず、そのまま長年放置していた。
スロッビング・グリッスルに影響を受けたというインダストリアル・ロックのミニストリーやナイン・インチ・ネイルズは、すぐに気に入ったんだけども。
最近、家に帰った時に(私は単身赴任中)、久々に目に留まって、「AB/7B」を聴いてみたら、スクエアプッシャーの曲と似ているなと感じて、すんなりと入って行けた。
ほかの曲も、ピンクフロイドの曲と似ているかなと思えてきて、親しみがわいた。
いろいろと情景が浮かんで面白い音楽だなとも思った。
「ウィーピング」は、おそらくアルバムのハイライトだと思うけど、後味が良くない。
この後に、続けて、ピンクフロイドの曲「コンフォタブリー・ナム」を聴き、気持ちを和らげて、締めくくるといい。
今週のお題「最近やっと○○しました」