ジャコ・パストリアス、ビレリ・ラグレーン「シュトゥットガルト・アリア」
Jaco Pastorius Bireli Lagrene 「Stuttgart Aria」
ジャコ・パストリアスが亡くなる前年、1986年に発売されたアルバム。新進気鋭のギター奏者ビレリ・ラグレーンと2人の名義になっている。
ビレリとの共演は、ジャコ名義のライブ盤「ヘヴィ・アンド・ジャズ」(1986年のライブ演奏を収録。92年発売)のように、ロック色の強いものもある。
このアルバム「シュトゥットガルト・アリア」は、シンセサイザーを多用したフュージョン。ジャコが私生活、演奏とも荒れていた時期だけど、演奏はしっかりしている。
ジャコのソロ第1作「ジャコ・パストリアスの肖像」(1976年)の収録曲のアレンジを変えて再演したり、ソロ第2作「ワード・オブ・マウス」(1981年)の収録曲を想起させるような演奏があったりして、面白い。
ウェザーリポート時代に発表した代表曲「ティーンタウン」(ウェザーリポートの1977年のアルバム「ヘヴィ・ウェザー」に収録)のフレーズなど、ジャコらしさが随所に見えるのもいい。
翌年のジャコの逝去を知るファンとしては、せつない気持ちにもなるが、ジャコが楽しんで弾いている姿が目に浮かび、リラックスしてジャコをしのべる。
収録曲「ドナ・リー」は、ジャズの巨人チャーリー・パーカー(サックス奏者)の曲。ジャコはソロ第1作「ジャコ・パストリアスの肖像」でベースソロによる演奏を見せていた。
今回は、フュージョンにアレンジ。
♪プワーワッ、パッパッパ…というシンセサイザーをバックに、ジャコのベースと、ビレリのギターが絡む。
ジャコのビレリの合奏(1分あたりからと、4分あたりから)、ジャコのソロ(2分~3分30秒あたり)が聴きどころ。
ジャコのソロは、シンセベースをバックに緩急を付けて展開される。
なかなかの好演だ。
収録曲「ザ・チキン」は、ジャコがよく弾く、ジャズファンクの定番曲。私も大好き。
♪ボーン、ボボッボー、ボボボンボーボー…というメロディー繰り返しのイントロからして、わくわくさせられる。
その後、ビレリが絡んでくる。
1分55秒~3分40秒あたりのビレリのソロがいい。
その後、笛みたいな涼やかな音色のシンセサイザーが入ってくる。
これは、ジャコがハーモニカ奏者トゥーツ・シールマンスと共演した曲「ブラックバード」(ビートルズの曲のカバー。アルバム「ワード・オブ・マウス」に収録)をちょっと、思い出させる。
収録曲「テレサ」は、ゆったりと美しい曲。
テレサは、当時のジャコの恋人の名前だ。
これは、ジャコの曲「スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット」(アルバム「ワード・オブ・マウス」に収録)みたいな趣。
ただただ、美しい演奏。
このアルバムの最大の聴きどころは、収録曲「シュトゥットガルト・アリア2」。
即興演奏で作った曲らしい。ジャコらしい演奏にあふれ、代表曲「ティーンタウン」のアレンジと言ってもいい。「ティーンタウン」のフレーズがそこら中に出てくる。
♪タラッタ、タラララ…とか(2分あたりと、5分20秒あたり)、♪タータラランララー、タランタランタランタラン…とか(4分10秒あたり)、♪タンタンターンタタ、タンタンターンタタ…とか(6分20秒あたり)。
前半は、ピロピロなシンセが前面に出て、いかにもフュージョンの趣。
4分30秒あたりから、ジャコが憧れるギターヒーロー、ジミ・ヘンドリックスの名曲「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」のフレーズを交え、ロック調に切り替わる。
ビレリの速弾きがかっこいい。
7分20秒あたりのジャコの即興演奏もいい。
♪ド~レ~ミ~ファ~ソ~ラ~シ~ド~、ジャガジャガジャジャッジャッ…みたいな演奏。これは、何かのライブでも聴いたことがある、ジャコお得意の即興演奏。
10分に及ぶこの曲「シュトゥットガルト・アリア2」の締めくくりは、♪チャラララー、チャッチャッチャラ…と「ティーンタウン」の締めくくりのフレーズそのもの。
まさに、「ティーンタウン」のアレンジだ。
曲名をはっきりと「ティーンタウン」にすればいいのに、と思うほどだ。



