メタルの帝王オジー・オズボーンが逝った。76歳だった。
黒魔術や悪魔のイメージを打ち出したバンド、ブラックサバスが成功。
その勢いのまま、怪奇趣味を前面に押し出した1980年代のソロ活動初期こそ、本領が発揮されていたと思う。
まさに、メタルブーム真っ盛りのその頃に思春期を送った私は、同級生に勧められて、はまった。
私にとっては、メタルと言えば、オジー。
ガンズ・アンド・ローゼズも大好きだが、オジーの魅力はそれ以上だ。
当時、同級生男子の間で人気のあったボン・ジョヴィやモトリー・クルー、ラットと比べれば、垢抜けていないというか、変なおっさんにしか見えなかったかもしれないが、私は、漆黒の深みを感じて、強く惹かれた。
お気に入りの曲は「月に吠える」(83年の同名アルバムに収録)。
タイトル通りに、「アオーッ」と狼のような遠ぼえが入る演出に、「ハッハッハッハ」という笑い声も相まって不気味さを醸し出す。
同じアルバムの曲「センター・オブ・イタニティ」もおどろおどろしさ十分。
教会の鐘とコーラス、パイプオルガンで荘厳に始まっておきながら突然、ギコギコなギター(byジェイク・E・リー)が入って激しい曲調に変わる。
この仕掛けが面白い。
トリッキーさは名曲「クレイジー・トレイン」(80年のアルバム「ブリザード・オブ・オズ」に収録)にも見て取れる。
叫び声と笑い声、ホラーっぽい効果音、♪ジャジャジャラジャラジャラ…という有名なギターリフ(byランディ・ローズ)で、おどろおどろしく始まっておきながら、爽やかな曲調に一変するのだ。
ブラックサバス時代の名曲「アイアンマン」(70年のアルバム「パラノイド」に収録)にも、ささやかな演出がある。
冒頭の「ア~イ・アム・アイアンマ~ン」という機械みたいな声は、扇風機の前で発声して、エフェクトをかけたという。
そんな遊び心が好きだった。
ソロ活動初期、狼男に仮装するなどアルバムジャケットでのなりきりや、ライブ中に客が投げ込んだコウモリを食いちぎるなどの奇行は、プロレスに似たショーマンシップを感じる。
例えるなら、かみつき攻撃が得意で、ヤスリで歯を研ぐ演出で知られた銀髪鬼フレッド・ブラッシー。
ブラッシーは、残虐な試合をテレビで見たお年寄りがショック死したと聞き、ひそかに心を痛めたらしい。
オジーも、作品にあおられて自殺者が出たとしてバッシングされ、悩んだらしい。
それでくたびれたのか。
90年代以降は怪奇色が薄れていった。
訃報に接し、名曲を聴いて、オジーをしのんでいた時。
熱烈なファンである弟が「間違えて2枚買った」と以前、置いていったアルバム「オーディナリー・マン」(2020年)が目に留まった。
エルトン・ジョンと共演したタイトル曲は美しいバラードで「普通の男で終わりたくない」という歌詞。
異名の「プリンス・オブ・ダークネス」を演じてきたオジーの葛藤を想像させ、せつなくなった。
<2025年7月28日追記>
本日、久しぶりに、弟と話す機会があり、オジー死去が話題になった。
明らかにされていない死因について、弟は「自殺ではないか」との見方。
やっぱり、そう思うか。
私も同感だ。
ほんとうに、せつない。
<2025年8月11日追記>
1週間くらい前に、「死因が判明」と報じられた。「急性心筋梗塞」「冠動脈疾患および自律神経障害を伴うパーキンソン病」などとされている。




