デッド・カン・ダンス「熾天使軍」
Dead Can Dance 「The Host Of Seraphim」
豪州出身の個性派バンド、デッド・カン・ダンスの作品は「呪術的で妖しい曲」と「荘厳で美しい曲」がある。
歌手リサ・ジェラルドが呪文を唱えるように歌う呪術的な妖曲が私の好みだが、荘厳な美曲も素晴らしい。
荘厳な美曲をいくつか紹介してみる。
「熾天使軍」は、荘厳な美曲の代表格で、デッド・カン・ダンスの傑作のひとつ。
1988年のアルバム「サーペンツ・エッグ」に収められている。
聖歌のような伴奏に乗り、リサが伸びやかな美声で、ゆったりと歌う。聴いていると、心が洗われるようだ。
1分50秒~2分50秒あたりが聴きどころ。
リサが、こぶしを効かせるというか、声を揺らすような歌い回しを見せる。
ブルガリアの伝統的な歌唱法「ブルガリアン・ボイス」みたいな感じだ。
これが神秘的な雰囲気を醸し出す。
ブルガリアン・ボイスとは、どんなものか。
例えば、ステラマラの歌手ソーニャ・ドラクリッチ。
ブルガリア民謡「プリトゥリ・セ・プラニナタ」をしみじみと歌い上げている。
そして、本場ブルガリアの女性コーラス集「ブルガリアン・ボイスの神秘(Le Mystere Des Voix Bulgares)」から、ブルガリア民謡「ピレンツェ・ペエ」も紹介してみる。
この曲はテレビアニメ「鬼滅の刃」の初期に使われた。各回のタイトルが出る時に、さわりだけ流れていた。
「ブルガリアン・ボイスの神秘」を発売したのは、英国のインディーズレーベル「4AD」。
巫女のように歌うリサのデッド・カン・ダンスと、「天使の歌声」と呼ばれる歌手エリザベス・フレイザーのバンド、コクトーツインズを売り出したレーベルで、目の付けどころが、いかにも、だ。
さらに、話が逸れるが、、、
リサは中東風の歌い回しも駆使する。
名曲「ユルンガ」がそうだ。
2分すぎからが、わかりやすいと思う。
これは、私好みの呪術的な妖曲。
1993年のアルバム「イントゥ・ザ・ラビリンス」に収めてある。
中東の歌唱法は、イラン出身の歌手アザム・アリ(ニヤーズ)を例示したい。
ソロ作品から「スプリング・アライブ」。
話を元に戻す。
リサの美声が味わえる荘厳な美曲は、「ユルンガ」と同じアルバム「イントゥ・ザ・ラビリンス」にもある。
収録曲「アリアドネ」。
「ラララライアー…」といったリサの歌声を多重録音で重ね、野生的な太鼓と鈴の音がリズムを刻む。
2分足らずの短い曲で、もう少し聴きたいなくらいで、終わる。
美曲「ミューズ神の召喚」も、多重録音を駆使。
♪カンコンカンコン…という鐘の音がリズムを刻む。
1987年のアルバム「暮れゆく太陽の王国で」に収録。
「催眠」は、とりあえず美曲に分類してみたが、妖しさ、ダークさも漂う。
エキゾチックな弦楽器は、リサが得意とする中国の打弦楽器「揚琴」だろう。
「レーイレイレイ、ライライ…」というリサの歌は、呪文みたいな歌唱法の芽生えを感じさせる。
1985年のアルバム「憂鬱と理想」に収めてある。
この曲「催眠」は、デッド・カン・ダンスの分岐点みたいな作品だと思う。
1984年のデビューアルバム「デッド・カン・ダンス」はダークなロックという感じだった。
私が好きな収録曲「フロンティア」は、呪術的な妖曲の雰囲気十分だ。
ただし、リサは、英語の歌詞を歌っている。
意味不明な呪文の詠唱のような歌い方は、この頃はしていない。
おそらく、リサは、次のアルバムの収録曲「催眠」で、「レーイレイレイ、ライライ」みたいな歌い方をして、何か手応えをつかんだに違いない。
そして、さらに次のアルバム「暮れゆく太陽の王国で」の収録曲「キャンタラ」で、呪文みたいな歌い方を確立し、呪術的な妖曲という柱が明確に立った。
「キャンタラ」は、ライブ盤「トゥワード・ザ・ウィズイン」(1992年)での神懸かり具合がすごい。3分30秒以降が圧巻。
その一方で、荘厳な美曲を磨き上げ、妖しさやダークさを取り除いて、もうひとつの柱に育てていったのだと思う。

![Into the Labyrinth [輸入盤CD] (CAD3621CD) Into the Labyrinth [輸入盤CD] (CAD3621CD)](https://m.media-amazon.com/images/I/51rH6TwTs3L._SL500_.jpg)
![WITHIN THE REALM OF A [Analog] WITHIN THE REALM OF A [Analog]](https://m.media-amazon.com/images/I/51f4PENoxDL._SL500_.jpg)

