トランペットに似た楽器フリューゲルホルンの優しく温かみのある音色が、叙情的な曲にマッチしていた。
爽やかな「フィール・ソー・グッド」。
勇ましい「サンチェスの子供たち」。
しみじみと聴かせる「哀しみのベラヴィア」。
そして、私が一番好きな曲で、しみじみ系の「チェイス・ザ・クラウズ・アウェイ」。
フリューゲルホルン奏者チャック・マンジョーネは間違いなく、フュージョンを代表するミュージシャンの1人だった。
もともと、ディジー・ガレスピーに憧れてトランペットを手に取り、ドラムの御大アート・ブレイキーのバンドに参加。同じく駆け出しだったピアノ奏者キース・ジャレットもいて、共演した。
ジャズからフュージョンに転向し、1970年代後半にブレイク。
1979年のアルバム「ファン・アンド・ゲームス」収録の曲「栄光をめざして」は、1980年に米国で開かれた冬季五輪のテーマ曲に採用されたという。
米国を代表するミュージシャンの1人だったと考えていいだろう。
当時、日本でも人気が高かった。
ボブ・ジェームスやスパイロジャイラとともに、フュージョンの代表的なミュージシャンとして親しまれていたと思う。
私の父が、ラジオ番組から録ったテープを持っていて、子どもの頃、よく聴かされた。とても懐かしい。
「フィール・ソー・グッド」(同名の1977年のアルバムに収録)は、哀愁漂うソロで始まる。
パーカッションが入って軽快なリズムに変化し、明るく爽やかな音色を響かせる。
タイトル通り「いい気分」になる曲。
ラジオで流しやすいようにか、3分半の短縮版も作られたが、10分近い原曲の方が、冒頭のソロや途中の即興演奏が楽しめておすすめだ。
「サンチェスの子供たち」(同名の1978年のアルバムに収録)は、スペイン風のギターと歌でしみじみと始まり、勇ましい曲調に変化する。
西部劇というか、荒野が目に浮かぶ曲。
日本では車のCMに使われた。
同じアルバムの収録曲「哀しみのベラヴィア」もいい。
序盤はしみじみと聴かせ、中盤から他の管楽器が入って美しいハーモニーで盛り上がる。
3分少々と短い曲。もう少し聴きたいなくらいでフェードアウトして終わる。
「チェイス・ザ・クラウズ・アウェイ」の次に好きな曲。
マンジョーネの持ち味は、しみじみ系の曲で生きると思う。
「チェイス・ザ・クラウズ・アウェイ」(同名の1975年のアルバムに収録)については、以前の記事で書いたので省略する。
ジャズ期の演奏についても、その記事で書いたけども、一言だけ紹介。
帝王マイルス・デイビスみたいに、ミュート付きトランペットで、渋い演奏を見せる。
フュージョンに転向後とは全く趣が異なる。これはこれで、いい。
そのマンジョーネが亡くなった。84歳だった。
ネットニュースで微妙に報じられたが、新聞では、ほぼ無視されたようだ。
先日、メタルの帝王オジー・オズボーン、プロレスの超人ハルク・ホーガンの死去が主要各紙で、2段以上の見出し付きで報じられたのとは、大違いだ。
たぶん、そうだろうとは、思っていた。
マンジョーネは、爆発的に人気が高まった後、低迷して影が薄くなり「一発屋」とも言われた。
急速にスターになってしまい、重圧が大きかったのだろうか。
才能豊かな音楽家だったのは間違いない。


