クスコ「インカ伝説」
Cusco 「Apurimac」
暑い日が続くと、クスコの音楽で涼みたくなる。
例えば、ヒマラヤ山脈の高峰のひとつをイメージした曲「ナンガ・パルバット」。
1981年のアルバム「クスコ2」に収められた曲で、涼しげなシンセサイザーの音色が響く。
氷壁が目に浮かびそうだ。
シンセを駆使したニューエイジ・ミュージックのバンド、クスコは初期の頃、夏向きの曲が多い。
1980年のデビューアルバム「デザート・アイランド」の収録曲「アルカトラズ」は、海辺を思わせる軽快な曲。
渓流を思わせる美しい曲「孤独な薔薇」(1987年のアルバム「伝説の地」に収録)と同様に、天気予報のBGMに使われた。
聴き覚えのある方もおられるのではないだろうか。
新境地は、1985年のアルバム「インカ伝説」で開いた。
ケーナ、サンポーニャといった南米アンデスの笛の音色をシンセで再現して、異国情緒を漂わせる。
もともと、バンド名の「クスコ」は、かつてアンデスに栄えたインカ帝国の首都から取った。フォルクローレ調の音楽は、視野に入れていたのかもしれない。
収録曲「コンドルの飛翔」は、アンデスを飛ぶコンドルが目に浮かぶ。
しみじみと聴かせる曲だ。
フォルクローレの定番「コンドルは飛んでゆく」と聴き比べてみるといい。
収録曲「インカの踊り」は、恐る恐るといった感じの出だしから、軽快なメロディーに入り、サンポーニャ風のかすれた音色が味わえる。
シンセの合いの手もいい。
収録曲「フルートの饗宴」は、ケーナ風とサンポーニャ風の音の掛け合いが面白い。
このアルバムの曲は、全体的に淡泊で、もう少し聴きたいのに短いのが惜しい。
浸るというより、ケーナ風、サンポーニャ風の音色を楽しむ作品だ。
これでシンセのさらなる可能性に目覚めたのか。
ギター、ベース、ドラムを加えた初期の編成から離れ、シンセでほぼ全ての音を作り込むようになった。
1989年のアルバム「リング・オブ・ドルフィン」は、ひとつの到達点だ。
収録曲「チェシュメの水」は、持ち味のフォルクローレ調を加えつつ、美しくて深みがある。
新解釈の「インカ伝説」とも言える曲「チェシュメの水」で進化を垣間見せつつ、じっくりと浸れる癒やし系音楽に仕上げた点がいい。
