ジェフ・ベック「恋はみずいろ」
Jeff Beck 「Love Is Blue」
ジェフ・ベックはギターで歌う。音色に味があり、情感たっぷりだ。
ブルース、ソウル/ファンク、ジャズ/フュージョン、テクノ…とジャンルを問わず、歌心と音色で聴かせ、ベックの音楽にしてしまう。
「恋はみずいろ」のようなムード音楽、「グリーン・スリーブス」のような民謡にまで手をつけているのは、すごいと思う。
下手なボーカルより遥かに歌心があり、ボーカルのないインストゥルメンタル・ロックの先駆者となった。
私は、フュージョン期のアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」(1975年)「ワイアード」(1976年)を聴いて、ベックが好きになった。
初期の作品を聴いてみようと、手に取ったのが「The Late 60's With Rod Stewart」(1988年)。
アルバム「トゥルース」(1968年)「ベック・オラ」(1969年)、シングルから選んだ曲を収めたコンピレーションCDで、邦題は「ベック・オラ+トゥルース+Singles!」と端的だった。
本来なら、このCD、ベックのギターとロッド・スチュワートの歌の融合が聴きどころなのだろう。
でも、私が気に入った収録曲は、ロッド・スチュワートがいない「恋はみずいろ」と「グリーン・スリーブス」。
こんな曲も演奏するのかと、ますます、ベックに興味がわいた。
「恋はみずいろ」はムード音楽の巨匠ポール・モーリアのCDで聴いていた。
もともとはフランス語の歌詞があるポピュラーソングらしいが、ポール・モーリアのインスト版がよく知られる。
「グリーン・スリーブス」は有名な曲なので、知っていた。
歌手ロリーナ・マッケニットもカバーしている。
アレンジとロリーナの力強い歌声が素晴らしい(1991年のアルバム「ザ・ヴィジット」に収録)。
ベック版「恋はみずいろ」は、中盤以降にコーラスが入る。
「グリーン・スリーブス」は、完全にインスト。
この2曲に接して思ったのは、ベックは、この頃、既にインストに関心があったんだなということ。
そして、どんな曲でもベック色に染められるのだなということ。
フラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラの逸話を思い出す。
カマロンは、盟友のギター奏者パコ・デ・ルシアとともに、フラメンコに新風を吹き込んだ。
当初、伝統的なフラメンコから大きく逸脱した作品を制作するにあたり、周囲が心配すると「大丈夫。俺が歌えば、フラメンコになるよ」と笑っていたという。
かっこよすぎる。
ベックも、カマロンと同様に、孤高の人なのだろう。
「恋はみずいろ」「グリーン・スリーブス」に接して、あらためて感じたことは、もうひとつある。
しみじみ系の曲を弾くベックもいいなということ。
私は「レッド・ブーツ」(「ワイアード」に収録)「スキャッターブレイン」(「ブロウ・バイ・ブロウ」に収録)といった「躍動ベック」が大好きだが、「しみじみベック」も味わい深い。
ベックは、アルバムに躍動ベックとしみじみベックを織り込んでいる。
「ワイアード」収録曲で言うと「グッバイ・ポークパイ・ハット」、「ブロウ・バイ・ブロウ」の収録曲「哀しみの恋人達」。
しみじみベックで一番好きな曲はジャズバラードの名曲「グッバイ・ポークパイ・ハット」。
以前、アルバム「ワイアード」の記事で書いたので、ここでは説明を省略する。
アイルランド民謡「デクラン」もいい。
これについては、この曲を収めたアルバム「フー・エルス!」(1999年)の記事をいずれ書きたい。
ジャズバラードの名曲「ジャンゴ」も演奏している。
ベックをフュージョンに引き込んだ張本人ジョン・マクラフリン(ギター奏者)との共演で。これは名演だ。
マクラフリンのアルバム「ザ・プロミス」(1995年)に収録されている。
このアルバムについては、近日中に書きたい。


